虐げられた臆病令嬢は甘え上手な王弟殿下の求愛が信じられない
***王兄第三姫殿下リリアンの視点***
侍女シエナの助言通り媚薬を完成させた。妾にかかればこんなものは朝飯前だ。
後は侍女に支持をしてセドリック様に飲ませるだけ。
窓辺に座りながら晴れ渡る青空を眺める。太陽の日差しに目が眩みそうになるが、妾は透き通った青、雄大な雲、燦々と輝く太陽が好きだ。こんな体質でなければ外に出てお昼寝をしたいほどに。
(いつかセドリック様と一緒に──)
そう夢見ていた。
願っていた。
呪われた体質の妾の夢を、あの人族の女は打ち砕いたのだ。
偶然とはいえ、見てしまった。
セドリック様にお姫様抱っこされて庭園を散歩する二人を。
睦まじい姿を目にしてしまった。
刹那、理解する。
どうあってもあの人族の女に敵わない──と。
あんな風に笑うセドリック様を見たことがなかった。
あんなに幸せそうなセドリック様を妾は知らない。
セドリック様が生まれてから、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと見ていたのに。
妾の中で何かが壊れた。
たった一つの希望。
たった一つの願い。
妾に残ったのは憎悪と嫉妬。
燃え上がる感情を抑えることはできなかった。あの女がいなければ、妾が隣にいたのに。
あの女を殺して私がセドリック様の隣に立つ。
腐臭し、悪臭によって部屋が黒ずみ、周囲の侍女たちが死んでいこうと関係ない。
願わくば、あの女に凄惨な死を。
そしてそれすら叶わないのなら、セドリック様に妾の恋に終止符を打ってほしい。
これは予感だけれど、最期の願いだけは叶う気がする。