クローバー

「えーっと…まぁ細かい事は良いじゃん。早く行こーよ。」

俺は喉の奥から返事をして天音の横を彼女のペースに合わせて歩く。

天音は意外と歩くのが速い。

相変わらず喋るときは手がじっとしていない。

「それにしてもさぁ、桜が散り始めちゃったね。綺麗だから好きなのに。」

天音はそう言いながらヒラヒラ落ちてくる桜の花びらを器用に掴む。

「へぇ。花とか好きなんだ。」

俺も真似して掴もうとしたけどなかなか上手くいかない。

「アタシは日本人だよ。桜が好きで当たり前でしょ。」

何か天音が言うと侍＝切腹。みたいに聞こえる。

「ちょっと！何変な顔してんのよ？アタシ、何かおかしな事言ったかなー？」

「ふっ…。いや別に。」

「今、鼻で笑ったでしょ！」

「細かい事は良いんじゃなかったっけ？」

「それとこれとは別…！」
こんな調子で天音と俺は話し続けながら歩いた。天音はお喋りが好きなようで俺が、「うん」とか「へぇ」とか「それで？」とか適当な相づちをつくだけで話が広がっていく。