クローバー
電車が一つ目の駅に到着した。

天音を見ると目を瞑ってこっくりこっくりしている。

なんだ、寝たのか。と思ったら、

「双葉君の番だよ?」

と急かされた。

「あ、えっと…す、すいか。」

再び電車が動き出す。

「じゃあ…花火。」

わざとか?さっきからしりとりになっていない。

それにしても「び」とはまた難題がきた。ただでさえ眠いのに…。

「び、び………ち。ビーチ。」

沈黙。

今度こそ寝たのか?

と、俺の意識が薄れたところで、

「フタバ…」

「さっきからしりとりになってないけど?」

今言った事は声になっていただろうか?頭の中で言っただけか?

天音は、

「だから…フタバ……って呼んでも良い?」

天音は夢の中で俺と話しているんだろうか?

到着を知らせるアナウンスが聞こえる。

「うん…」

分かった。ちゃんと起きてるから大丈夫ですよ車掌さん。


ガタン!と電車が大きく揺れてハッとなり一気に意識が戻る。

危ない。もう少しで寝るところだった。電車は丁度ホームに侵入したところだ。
となりで満足気な顔をして寝ている天音をそっと起こす。

「おい。もう着くぞ。」
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