クローバー
そして向かえた放課後。

まんまと彼女に捕まって俺たち意外に誰もいない教室で、彼女は教壇に立ち俺は合い向かいの少し離れた席に座っていた。

彼女が黒板にでかでかと文字を書いている姿を見ながら、どうして俺はここにいるんだろう?と頭の中で思う。

「さてと、と。」

彼女は手についた白いチョークを払いながら、くるりと俺の方を向いた。

黒板には「天音」と、大きく書かれている。

彼女の名前だろう。

「あまねって読むの。これがあたしの名前。覚えておいてね。」

彼女の癖なのか喋ってるときは手がじっとしていない。

「うん…。」

「じゃあ本題ね!双葉君の悩み…詳しくは知らないけど、でもまずは1人でもいいから友達を作る事が第一だと思うの。」

何を言い出すかと思えばだ。頑張って話してくれている彼女には悪いけど限界だ。

「気遣ってもらって悪いけど別に友達いないわけじゃないしさ。何を思って…」
突然彼女は廊下に聞こえるくらいの声で「だって!」と叫ぶ。

「だって双葉君って、いっつも1人じゃん。朝来るときも休み時間もお昼も帰るときも。だから、寂しそうだなって思って。だからあたしが…友達になるって思ったの。」

「別に寂しくなんか無いよ。」

「そんなはず無い!」

真っ赤になった天音の顔。

彼女は自分が大きな声を出したことに驚いてる感じだった。無意識だったんだろう。

「俺は今のままで十分満足だよ。」

違うんだ。

「仮に君が俺を必要としてても、」

ごめん…ごめん。

「俺は君を必要としてない。」

押し付けられてる気がして。

「だからもう俺には関わらないで欲しい。」

慣れてなくて咄嗟に拒絶した。

いつの間にか彼女はぽろぽろ涙を流していた。

それもそうか。と思う。結構ヒドイ言い方だったと思うし。

彼女は俺に向かってゆっくり歩いてくる。

ビンタの一つでもくらわせるつもりなんだろう。仕方の無いことだ。彼女を傷つけてしまったから。

いよいよ彼女は俺の目の前に立ち、真っ直ぐ俺の目を見る。

彼女が何も言わないのが逆に怖い。
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