麗しの王様は愛を込めて私を攫う
4 友人
十四歳になったメアリーは、森に入り野苺を摘んでいた。
一度、矢で射られそうになってからは、なるべく目立つ色の服を着て森へ入るようにしている。
(地味な服を着ていては、動物に間違えられてしまうから)
メアリーの中で、あの日の怖かった記憶は人が人を矢で射るなんてあり得ないという気持ちから勝手に書き換えられていた。
自分を狙って放たれた矢は、動物と間違えて射られたものとなっていたのだ。
「メアリー」
「………!」
沢山実っていた野苺を摘んでいると、突然後ろから声をかけられた。
驚いた顔をして振り向けば、隣の家に住む同じ年の少年ジェームスが立っていた。
「なーんだ、ジェームスかビックリした」
そう話した私の脳裏には、なぜか銀色の髪の少年の姿が横切った。
(……? 何?)
「なーんだは無いだろう? ひどいなぁ、メアリーは野苺摘んでたの?」
私が持っていたカゴを覗きながらジェームスは俺も手伝うよ、と横に並び野苺を摘んでカゴに入れはじめた。
「ジェームスは? 今日はダイアナとデートじゃなかったの?」
ジェームスは私の友達ダイアナと先週から付き合いだしたのだ。
十四歳にもなれば、恋人を持つ人達も増えてくる。
「……それがさ、俺振られたんだ」
プチプチと野苺を摘みながら、ジェームスは苦笑いをして話す。
「ええっ! もう? だってまだ一週間しか経ってないわよ?」
「うん……そうなんだけど」
何か訳があるのかしら? 私はまだ誰ともお付き合いをした事無いから分からない。
「実はさ、俺が……本当に好きな人がいるって気づいてしまって」
「何それ! ジェームスから告白したんでしょ? なのにやっぱり違ったって言った訳? 信じらんない!」
「ダイアナを好きだと思ってたんだよ、だけど違った。俺はメアリーが好きだったんだ!」
「え?!」
バサッ
ジェームスの思っても見なかった告白に、驚いてカゴを落としてしまった。
「ダイアナは私の友達なのよ?」
「うん、知ってる」
「その事ダイアナに言ったの?」
「言った」
「私はジェームスのこと何とも思ってないわ」
「それでもいい、俺の気持ちを伝えたかっただけだから」
ごめん、と言うとジェームスは帰っていった。
その後ろ姿を見送り、落としたカゴを拾うと、私はまた一人で野苺を摘んだ。
だからか……。
三日前から、ダイアナが私を避けるようになった。いつも一緒に食べていた昼食も、別の友達と食べるようになって。
元々、私には友達が少ない。
クロエの事が原因の一つではあるのだけれど。
私を虐めていたクロエは悲惨な目に遭ってしまった。
もちろん私がやった訳じゃないけれど、関わるといい事がないと思われてしまった様なのだ。
それでもダイアナだけは仲良くしてくれていた。
お互いの家を行き来するほどの間柄だったのに……。
「ジェームスのバカ……」
カゴに集めた野苺を持って、家に帰った。
ジャムを作る前に一粒口に入れる。
「ちょっと酸っぱい」
私は今日一日で、二人の友達を失った気持ちがした。
一度、矢で射られそうになってからは、なるべく目立つ色の服を着て森へ入るようにしている。
(地味な服を着ていては、動物に間違えられてしまうから)
メアリーの中で、あの日の怖かった記憶は人が人を矢で射るなんてあり得ないという気持ちから勝手に書き換えられていた。
自分を狙って放たれた矢は、動物と間違えて射られたものとなっていたのだ。
「メアリー」
「………!」
沢山実っていた野苺を摘んでいると、突然後ろから声をかけられた。
驚いた顔をして振り向けば、隣の家に住む同じ年の少年ジェームスが立っていた。
「なーんだ、ジェームスかビックリした」
そう話した私の脳裏には、なぜか銀色の髪の少年の姿が横切った。
(……? 何?)
「なーんだは無いだろう? ひどいなぁ、メアリーは野苺摘んでたの?」
私が持っていたカゴを覗きながらジェームスは俺も手伝うよ、と横に並び野苺を摘んでカゴに入れはじめた。
「ジェームスは? 今日はダイアナとデートじゃなかったの?」
ジェームスは私の友達ダイアナと先週から付き合いだしたのだ。
十四歳にもなれば、恋人を持つ人達も増えてくる。
「……それがさ、俺振られたんだ」
プチプチと野苺を摘みながら、ジェームスは苦笑いをして話す。
「ええっ! もう? だってまだ一週間しか経ってないわよ?」
「うん……そうなんだけど」
何か訳があるのかしら? 私はまだ誰ともお付き合いをした事無いから分からない。
「実はさ、俺が……本当に好きな人がいるって気づいてしまって」
「何それ! ジェームスから告白したんでしょ? なのにやっぱり違ったって言った訳? 信じらんない!」
「ダイアナを好きだと思ってたんだよ、だけど違った。俺はメアリーが好きだったんだ!」
「え?!」
バサッ
ジェームスの思っても見なかった告白に、驚いてカゴを落としてしまった。
「ダイアナは私の友達なのよ?」
「うん、知ってる」
「その事ダイアナに言ったの?」
「言った」
「私はジェームスのこと何とも思ってないわ」
「それでもいい、俺の気持ちを伝えたかっただけだから」
ごめん、と言うとジェームスは帰っていった。
その後ろ姿を見送り、落としたカゴを拾うと、私はまた一人で野苺を摘んだ。
だからか……。
三日前から、ダイアナが私を避けるようになった。いつも一緒に食べていた昼食も、別の友達と食べるようになって。
元々、私には友達が少ない。
クロエの事が原因の一つではあるのだけれど。
私を虐めていたクロエは悲惨な目に遭ってしまった。
もちろん私がやった訳じゃないけれど、関わるといい事がないと思われてしまった様なのだ。
それでもダイアナだけは仲良くしてくれていた。
お互いの家を行き来するほどの間柄だったのに……。
「ジェームスのバカ……」
カゴに集めた野苺を持って、家に帰った。
ジャムを作る前に一粒口に入れる。
「ちょっと酸っぱい」
私は今日一日で、二人の友達を失った気持ちがした。