麗しの王様は愛を込めて私を攫う
8 リシウスside
会議が行われていた部屋は、一瞬にして凍りついたかのようになった。
私が『メアリー様が攫われました』とお伝えしたからである。
この場にいる臣下は皆、メアリー様の事は知っておられ、妃へ迎えられる事を承認されている。
リシウス陛下が彼女に執着されている事も分かっておられる。
さすがに、昨晩のうちに陛下が城へ攫われて来られている事を知るものはいなかったが。
リシウス陛下から放たれる殺気と、怒気を押し殺した低い声が静まり返った室内に響く。
「それで」
「メアリー様は、スターク公爵ザイオン様に連れ去られたと思われます」
ザイオン様の事は詳しく調べるまでもなかった。
庭師がザイオン様ともう一人の男が女性を引きずるように連れていく所を見ていたのだ。
「影は」
「本日メアリー様に付いていたのは、長年公爵家に仕えていた者だったらしく」
そこまで話した私は、息を呑んだ。
リシウス陛下が恐ろしく冷たい視線で私を見ていた。……あの目はヤバい。
私の命もここまでか……と思っていると、凍る様な視線は私から大臣へと移った。
視線を向けられた大臣は、まるで首を絞められたかの様な顔をしている。
「大臣、僕は舐められているのかなぁ? 僕はこの国の王様だよね? その僕が大切にしている人を攫うなんてどういうことだろう。コレはスターク公爵の考えだろうか、ねぇ?」
口角は上がっておられるが、その目は射殺さんとばかりになっていた。
「い、いえ、そんな事はありますまい。スターク公爵はリシウス陛下が幼き頃より仕えておられますから」
「そうか」
リシウス陛下は一言呟くと黙ってしまわれた。
微動だにせず表情も無い人形のような美しいその顔を、此処にいる誰もが固唾を飲み見守っていた。
長い長い沈黙の後、リシウス陛下は静かに椅子から立ち上がると皆に向かって告げられた。
「皆に言っておく。外交の為に他国の姫君と会う事は構わないが、僕が妻に迎えるのはメアリーだけだ」
皆は一斉に起立し、その場で敬礼をした。
その言葉から一時間後、影達により、本日メアリー様に付いていたディックという男は始末された。
私が『メアリー様が攫われました』とお伝えしたからである。
この場にいる臣下は皆、メアリー様の事は知っておられ、妃へ迎えられる事を承認されている。
リシウス陛下が彼女に執着されている事も分かっておられる。
さすがに、昨晩のうちに陛下が城へ攫われて来られている事を知るものはいなかったが。
リシウス陛下から放たれる殺気と、怒気を押し殺した低い声が静まり返った室内に響く。
「それで」
「メアリー様は、スターク公爵ザイオン様に連れ去られたと思われます」
ザイオン様の事は詳しく調べるまでもなかった。
庭師がザイオン様ともう一人の男が女性を引きずるように連れていく所を見ていたのだ。
「影は」
「本日メアリー様に付いていたのは、長年公爵家に仕えていた者だったらしく」
そこまで話した私は、息を呑んだ。
リシウス陛下が恐ろしく冷たい視線で私を見ていた。……あの目はヤバい。
私の命もここまでか……と思っていると、凍る様な視線は私から大臣へと移った。
視線を向けられた大臣は、まるで首を絞められたかの様な顔をしている。
「大臣、僕は舐められているのかなぁ? 僕はこの国の王様だよね? その僕が大切にしている人を攫うなんてどういうことだろう。コレはスターク公爵の考えだろうか、ねぇ?」
口角は上がっておられるが、その目は射殺さんとばかりになっていた。
「い、いえ、そんな事はありますまい。スターク公爵はリシウス陛下が幼き頃より仕えておられますから」
「そうか」
リシウス陛下は一言呟くと黙ってしまわれた。
微動だにせず表情も無い人形のような美しいその顔を、此処にいる誰もが固唾を飲み見守っていた。
長い長い沈黙の後、リシウス陛下は静かに椅子から立ち上がると皆に向かって告げられた。
「皆に言っておく。外交の為に他国の姫君と会う事は構わないが、僕が妻に迎えるのはメアリーだけだ」
皆は一斉に起立し、その場で敬礼をした。
その言葉から一時間後、影達により、本日メアリー様に付いていたディックという男は始末された。