麗しの王様は愛を込めて私を攫う
リシウス陛下は捲し立てるザイオン様に呆れ、脚を組み替えられた。
ふうと冷たい息を吐くと目を閉じられてしまった。
「なんとか言え!」
リシウス陛下はゆっくりと目を開き、ザイオン様を見つめられる。
「ザイオン、僕が聞きたいのはそんな話ではない。なぜメアリーを攫ったのかと聞いているだけだ。王命だ、答えろ」
リシウス陛下の低い声に、恐れをなしたのかザイオン様はすべてを口に出した。
「金が要るんだよ! お前のせいで父上は俺に自由に金を使わせなくなったんだぞ!」
「金?」
リシウス陛下は、怒鳴り声を上げるザイオン様に冷めた目を向け静かに尋ねられた。
「あの女さえ渡せば大金が手に入るんだよ‼︎」
「…………」
リシウス陛下が何も言って来ない事に、ザイオン様は得意げになって話しを続けた。
「クロエという女が、メアリーとかいう女を捕らえようとしていたんだ。生きたまま渡せば金を貰える約束なのさ」
すべてを言い終えるとザイオン様は、はっとして手で口を押さえた。
「メアリーと引き換えにイザベルと結婚させることが目的ではなく? 金の為だったということかな」
リシウス陛下が問うと、イザベル様も知らぬ事であったようでザイオン様に尋ねられた。
「そうなの? 私の為ではなかったの? あなたお金の為にそんな事を」
ザイオン様は椅子に仰け反りながら、ニヤリと笑った。
「昨日、あの女を捕まえる寸前でリシウスの部下に持って行かれたからな。まぁやってる事はお前と同じだ」
それを聞いたリシウス陛下は首を傾げられる。
「お前とは違うだろう? 僕は彼女を愛しているから連れて来たんだ」
「愛しているですって?」
「そうだよ」
「リシウス様何を言ってらっしゃるの? 愛しているだなんてあり得ないわ! 女は平民なのでしょう?」
リシウス陛下の言葉に対し、イザベル様は嫉妬に狂う女のように金切り声をあげられた。
「身分など僕には関係ない」
「あなたは王なのよ! 平民なんて下働きにでもする意外使う事はないでしょう?」
「では、君ならいいと?」
「そうよ! 私より身分の高い令嬢はいないわ!」
「……身分の高い令嬢ね」
呆れた様な顔をされたリシウス陛下は立ち上がり、応接間を出て行かれた。
「おい、何処行くんだよ!」
「メアリーの所」
そう言われたリシウス陛下を慌てたようにザイオン様は追いかける。
陛下はまるで屋敷の中を知り得ている様に、迷う事なく歩かれた。
廊下に出ると突き当たりを右へと曲がり、二つ目の部屋の扉を開ける。その部屋の壁一面にある、大きな本棚の前でリシウス陛下は立ち止まられた。
本棚をジッと見て、中央の棚の左から二番目に置かれたの黒い背表紙の本を手前に傾けた。
ガタン、と何かが外れる音がする。
リシウス陛下が本棚の下を足で蹴ると、まるで扉の様に本棚がギイッと開いた。
そこには暗く狭い部屋があった。床には足枷のついた鎖が落ちている。
「へぇ、すごいな。お前が探しているものはさっきまではそこに居たのさ。残念だったな、もう他の場所に」
ニヤニヤと歪んだ笑みを浮かべて話すザイオン様の顔を、リシウス陛下は冷ややかな目で見ながら吐き捨てるように呟かれた。
「殺しておけばよかった」
「は? 捕らえていたあの女をか?」
ザイオン様は訳がわからないという顔をする。
そんな彼をリシウス陛下は、蔑む様な目で見られていた。
「スターク公爵が気の毒だ」
「はぁっ? どういう事だ?」
「家督を継ぐ者がいなくなる」
「何言ってるんだ?」
「僕の言っている意味すら分からないとは」
ザイオン様は、リシウス陛下にとって一番大切な人に手を出してしまわれたのだ。
『家督を継ぐ者がいなくなる』その言葉の意味を理解する間もなく、彼はこの国から消されてしまった。
哀れだな、とリシウス陛下は何の感情も持たない声で呟かれた。
ふうと冷たい息を吐くと目を閉じられてしまった。
「なんとか言え!」
リシウス陛下はゆっくりと目を開き、ザイオン様を見つめられる。
「ザイオン、僕が聞きたいのはそんな話ではない。なぜメアリーを攫ったのかと聞いているだけだ。王命だ、答えろ」
リシウス陛下の低い声に、恐れをなしたのかザイオン様はすべてを口に出した。
「金が要るんだよ! お前のせいで父上は俺に自由に金を使わせなくなったんだぞ!」
「金?」
リシウス陛下は、怒鳴り声を上げるザイオン様に冷めた目を向け静かに尋ねられた。
「あの女さえ渡せば大金が手に入るんだよ‼︎」
「…………」
リシウス陛下が何も言って来ない事に、ザイオン様は得意げになって話しを続けた。
「クロエという女が、メアリーとかいう女を捕らえようとしていたんだ。生きたまま渡せば金を貰える約束なのさ」
すべてを言い終えるとザイオン様は、はっとして手で口を押さえた。
「メアリーと引き換えにイザベルと結婚させることが目的ではなく? 金の為だったということかな」
リシウス陛下が問うと、イザベル様も知らぬ事であったようでザイオン様に尋ねられた。
「そうなの? 私の為ではなかったの? あなたお金の為にそんな事を」
ザイオン様は椅子に仰け反りながら、ニヤリと笑った。
「昨日、あの女を捕まえる寸前でリシウスの部下に持って行かれたからな。まぁやってる事はお前と同じだ」
それを聞いたリシウス陛下は首を傾げられる。
「お前とは違うだろう? 僕は彼女を愛しているから連れて来たんだ」
「愛しているですって?」
「そうだよ」
「リシウス様何を言ってらっしゃるの? 愛しているだなんてあり得ないわ! 女は平民なのでしょう?」
リシウス陛下の言葉に対し、イザベル様は嫉妬に狂う女のように金切り声をあげられた。
「身分など僕には関係ない」
「あなたは王なのよ! 平民なんて下働きにでもする意外使う事はないでしょう?」
「では、君ならいいと?」
「そうよ! 私より身分の高い令嬢はいないわ!」
「……身分の高い令嬢ね」
呆れた様な顔をされたリシウス陛下は立ち上がり、応接間を出て行かれた。
「おい、何処行くんだよ!」
「メアリーの所」
そう言われたリシウス陛下を慌てたようにザイオン様は追いかける。
陛下はまるで屋敷の中を知り得ている様に、迷う事なく歩かれた。
廊下に出ると突き当たりを右へと曲がり、二つ目の部屋の扉を開ける。その部屋の壁一面にある、大きな本棚の前でリシウス陛下は立ち止まられた。
本棚をジッと見て、中央の棚の左から二番目に置かれたの黒い背表紙の本を手前に傾けた。
ガタン、と何かが外れる音がする。
リシウス陛下が本棚の下を足で蹴ると、まるで扉の様に本棚がギイッと開いた。
そこには暗く狭い部屋があった。床には足枷のついた鎖が落ちている。
「へぇ、すごいな。お前が探しているものはさっきまではそこに居たのさ。残念だったな、もう他の場所に」
ニヤニヤと歪んだ笑みを浮かべて話すザイオン様の顔を、リシウス陛下は冷ややかな目で見ながら吐き捨てるように呟かれた。
「殺しておけばよかった」
「は? 捕らえていたあの女をか?」
ザイオン様は訳がわからないという顔をする。
そんな彼をリシウス陛下は、蔑む様な目で見られていた。
「スターク公爵が気の毒だ」
「はぁっ? どういう事だ?」
「家督を継ぐ者がいなくなる」
「何言ってるんだ?」
「僕の言っている意味すら分からないとは」
ザイオン様は、リシウス陛下にとって一番大切な人に手を出してしまわれたのだ。
『家督を継ぐ者がいなくなる』その言葉の意味を理解する間もなく、彼はこの国から消されてしまった。
哀れだな、とリシウス陛下は何の感情も持たない声で呟かれた。