麗しの王様は愛を込めて私を攫う
 私は最初にいた部屋へと戻って来た。

 女医と侍女が傷の手当てをしてくれ、体も清めてもらった。
 薬を飲んだなら少し眠る様にと言われ、横になった。


 誰もいなくなった部屋。
 けれど扉の向こうには、警護を担う騎士がいる。
 そしてこの部屋のどこかには影と呼ばれる人達もいるのだと、さっき教えてもらった。

 影、ザイオンと一緒に私をここから攫った人もそう言っていた。

 すぐにいなくなったあの人はどうなったのだろう。
 王様を裏切ってザイオンに従ったから解雇されたのかも知れない。



 こうしていると、さっき迄の事が嘘のようだ。

 王様に攫われて、ザイオンに攫われて、クロエに囚われて危うく焼け死ぬところだったなんて。

 たった二日でこんなに攫われる事ってある?

 それを、この国の王様に助けてもらうなんて。

 でも、最初に私を攫ったのは王様だった。
 リシウス王。

 不思議な人。
 私を妻にすると言いながら……。

 足枷をするし……。
 部屋に閉じ込めて……。


 どうして助けに来てくれたのかな、私なんかを……。

 あんな危ない事を…火の中に…王様が。

 ………私を………。
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