麗しの王様は愛を込めて私を攫う
 彼のもとを去って、一年が過ぎた。

 あれから彼が私を訪ねてくる事はなかった。
 当たり前だが贈り物もない。

 それに、私が家に帰りひと月ほど過ぎた頃から、王様はいろいろな国のお姫様やご令嬢と会われるようになっていた。

 それは勿論、お妃様選びの為だ。
 国民は美しい王様に関心を持っていて、そう云う話題はすぐに広まり耳に入ってくる。

 それに、彼は一国の王。
 若いとはいえ、いつまでも独り身ではいられない。

 やはり、私のことはただの戯れだったのだろう。


 人の心は複雑なもの。
 彼の私への気持ちが戯れだったと分かった途端、私はリシウス陛下の事を慕うようになってしまった。

 自分から離れたのに、今頃になってこんな事を思うなんて。

 忘れなければと陛下からの贈り物を捨ててしまおうとした。けれど、それも出来ず、全てを亡くなったおばあちゃんの部屋へと押し込んだ。
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