1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜

<しっかりと体を使います>

目の前にはカリカリベーコンにスクランブルエッグ、マンゴードレッシングのかかった生野菜とツナがサンドされた表面がほんのりときつね色になったイングリッシュマフィンがワンプレートに盛り付けられ食欲を誘っていた。

「おはようございます。いつもすみません作ってもらってばかりで」

「いつもの様にしているだけだ。気にすることは無いよ」

席についてスクランブルエッグをフォークで掬って口に運ぶとフワフワで塩味がほどよい。

「おいしい」

箸がというかフォークが止まらなくて次々と口に入れるとあっという間に完食してしまった。

「そんな風に美味しそうに食べてもらえると作りがいがあるよ」

トマトジュースを飲み干すと、今度はコーヒーが目の前に置かれた。

「竜基さんて何でも出来るんですね」

「両親が忙しい人たちだったからね、気がついたらこうなってた。健康は食からだからね」

こういう人をスパダリって言うんだろうな。

「ということで、体は基本だ。今日はレッスンを受けてもらうよ」

「レッスンですか?」

「亜由美は元が良いから外見を変えただけでもかなり変身したけど、それに身のこなしマナーがそなわなければ単なるメッキになってしまう」

確かにそうだ。昨日の綺麗な下着を付けると気持ちが高揚するように、外側だけを着飾っても行動が伴わなければ高い服も靴も魅力が半減する。井口乃乃が着ている服もバッグもいいものなのかもしれないけど、本人の性格の悪さが顔に出ていてそのインパクトで着ているものも持っているものも意地悪そうな顔にしか目線がいかなった。でも、男の人はそういうのも可愛いんだろうか?

「でも、男の人は多少性格に難があっても美人が好きですよね?」

「凄く大括りだね。ただ、美人なら性格に少々難があっても構わないという男もいる。その場合はよほど懐が広いかそういう性癖なのか、もしくは男も同レベルだということだ」

乃乃メン達は後のタイプなんだろうな。

「さて、今日はハイヒールを履いてくれ」

「はい」と返事をして部屋に戻るとコーディネートカードを確認しながら着替えを済ませる。

履き慣れないハイヒールでふらつくと、竜基さんは自然な動作で肘を開けてつかまりやすくしてくれた。

車への乗り降りもエスコートされ、竜基さんの腕に捕まりながらやってきたのはデパートのコスメ店だった。
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