1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜
<乃乃の罠>
毎日、竜基さんに魔法をかけてもらって家を出る。
大学では佐藤隆と上野慎一が話を掛けてきていたがファミレスでの会話を聞いていた人がいたようで上野慎一の写真と共に“友人の女とヤルために無関係女子を喰いものにするゲス”というコメント付きでストーリーに流されたらしい。
井口乃乃、佐藤隆、上野慎一とあの教室での言い争いからツルんでいない中田次郎は経済学部でも結構目立つ存在だったため慎一の記事が佐藤隆と乃乃を関連づけて尾鰭が付いて噂され、佐藤隆と上野慎一が近づいてくると京子と学部内で井口乃乃に嫌がらせをされたことがある女子がブロックしてくれるようになり結構安心して講義を受けることができるようになった。
噂話に巻き込まれるのは嫌だけど、乃乃害にあった人と仲良くなる事が出来て今更ながらのキャンパスライフを楽しむことが出来そうな事は嬉しいかも。
バイト先では元々話を掛けてくれるのは橘先輩だけだったから、就職活動真っ只中の先輩は土曜日のみのシフトなので、あからさまにバカにしていた人達がよそよそしい感じになって前よりも過ごしやすくなった。
自分が変わると周りも微妙にだけど変化が起こってくるんだ、チャンスをくれた竜基さんには感謝しかないから、しっかりニセ彼女を努めようと決意を新たにする。
ただ、塩対応だったチーフがやたらと優しくなったのは気持ち悪い。
ウォーキングも様になってきたし、マナー講座も初めて知ることばかりでたのしい。
そして、楽しみにしていた金曜日。
毎日家に帰るとハグタイムとしてだきしめられたりしているが、バーテンダー姿の竜基さんは格別にかっこいい。1週間頑張った私へのご褒美だ。
シェーカーをふる竜基さんをチラ見しながらドライマティーニを楽しんでいるとスリーピースに身を包み、髪をぴっちり後ろに撫でつけた男性が自分のグラスを手に持って隣に座った。
「隣、いいかな?」
って、もう座ってるし。
仕方がなないので軽く頷いてからスマホを取り出してメッセージのチェックを始めた。
「この店は初めて?」
スマホを見てるんだから察してよ!
てか、今までこんなふうに男性から声をかけられることがなかった。
「いいえ、どちらかと言えば常連です」
「どうして今まで出会わなかったんだろうね」
「必要がないからだと思います」
枯れ女子だった私はこんな風に話しかける人はいなかった。でも今は下心が見え隠れする誘いが増えた気がする。
自分自身に努力している人ってこういう試練をいくつも越えているんだろう、子供の頃のことを言い訳に努力をしていなかったことに気付かされた。違う、努力をしようとしたとしても誰も背中を押してくれなかった。違うこれも言い訳だ。京子は何度もアドバイスしてくれたのに自信が無いと逃げて誤魔化してきた。
竜基さんの魔法でわたしはたったの1週間で自分に自信をもてるようになった。
だから、ちゃんと竜基さんの求める女性になって役に立ちたい。
「・・・くれないかな?」
いけないトリップしてた。
「え?」
「酷いな、僕が隣にいるのに考え事?連絡先を教えてくれないか?また会いたい」
「いえ、結構です」
「一億二千万分の2人という奇跡を大切にしない」
どうしよう、しつこいし、なんか変なこと言っているし、全身に発疹が出て来そう。
でも大丈夫、私には魔法がかかっている。
その魔法をかけた竜基さんがこちらを見ている。
[嫌なことは嫌とはっきりと伝える]
「特に会いたいとも思わないので連絡先を教えるつもりは無いです。一人でゆっくり楽しみたいので話を掛けるのもご遠慮ください」
「そんないやらしい身体で物欲しそうにしていたくせに、どうせ“パパ”でも待っているんだろ」
あまりに酷い言葉に一瞬にして顔が熱くなった。
言われた言葉にショックで固まっていると、長い指の綺麗な手が私とナンパ男の間を遮るように差し出された。
「お客さま、2、420円になります」
静かだけど抗えない音質で、男は眉を顰めながらもカードを竜基さんに手渡した。
「ふうっ」
思わず安堵のため息をつくと竜基さんは小さな声で「よくできました」と耳元でささやいた。
耳は反則だよ。
顔だけでなく身体中が熱くなった。
大学では佐藤隆と上野慎一が話を掛けてきていたがファミレスでの会話を聞いていた人がいたようで上野慎一の写真と共に“友人の女とヤルために無関係女子を喰いものにするゲス”というコメント付きでストーリーに流されたらしい。
井口乃乃、佐藤隆、上野慎一とあの教室での言い争いからツルんでいない中田次郎は経済学部でも結構目立つ存在だったため慎一の記事が佐藤隆と乃乃を関連づけて尾鰭が付いて噂され、佐藤隆と上野慎一が近づいてくると京子と学部内で井口乃乃に嫌がらせをされたことがある女子がブロックしてくれるようになり結構安心して講義を受けることができるようになった。
噂話に巻き込まれるのは嫌だけど、乃乃害にあった人と仲良くなる事が出来て今更ながらのキャンパスライフを楽しむことが出来そうな事は嬉しいかも。
バイト先では元々話を掛けてくれるのは橘先輩だけだったから、就職活動真っ只中の先輩は土曜日のみのシフトなので、あからさまにバカにしていた人達がよそよそしい感じになって前よりも過ごしやすくなった。
自分が変わると周りも微妙にだけど変化が起こってくるんだ、チャンスをくれた竜基さんには感謝しかないから、しっかりニセ彼女を努めようと決意を新たにする。
ただ、塩対応だったチーフがやたらと優しくなったのは気持ち悪い。
ウォーキングも様になってきたし、マナー講座も初めて知ることばかりでたのしい。
そして、楽しみにしていた金曜日。
毎日家に帰るとハグタイムとしてだきしめられたりしているが、バーテンダー姿の竜基さんは格別にかっこいい。1週間頑張った私へのご褒美だ。
シェーカーをふる竜基さんをチラ見しながらドライマティーニを楽しんでいるとスリーピースに身を包み、髪をぴっちり後ろに撫でつけた男性が自分のグラスを手に持って隣に座った。
「隣、いいかな?」
って、もう座ってるし。
仕方がなないので軽く頷いてからスマホを取り出してメッセージのチェックを始めた。
「この店は初めて?」
スマホを見てるんだから察してよ!
てか、今までこんなふうに男性から声をかけられることがなかった。
「いいえ、どちらかと言えば常連です」
「どうして今まで出会わなかったんだろうね」
「必要がないからだと思います」
枯れ女子だった私はこんな風に話しかける人はいなかった。でも今は下心が見え隠れする誘いが増えた気がする。
自分自身に努力している人ってこういう試練をいくつも越えているんだろう、子供の頃のことを言い訳に努力をしていなかったことに気付かされた。違う、努力をしようとしたとしても誰も背中を押してくれなかった。違うこれも言い訳だ。京子は何度もアドバイスしてくれたのに自信が無いと逃げて誤魔化してきた。
竜基さんの魔法でわたしはたったの1週間で自分に自信をもてるようになった。
だから、ちゃんと竜基さんの求める女性になって役に立ちたい。
「・・・くれないかな?」
いけないトリップしてた。
「え?」
「酷いな、僕が隣にいるのに考え事?連絡先を教えてくれないか?また会いたい」
「いえ、結構です」
「一億二千万分の2人という奇跡を大切にしない」
どうしよう、しつこいし、なんか変なこと言っているし、全身に発疹が出て来そう。
でも大丈夫、私には魔法がかかっている。
その魔法をかけた竜基さんがこちらを見ている。
[嫌なことは嫌とはっきりと伝える]
「特に会いたいとも思わないので連絡先を教えるつもりは無いです。一人でゆっくり楽しみたいので話を掛けるのもご遠慮ください」
「そんないやらしい身体で物欲しそうにしていたくせに、どうせ“パパ”でも待っているんだろ」
あまりに酷い言葉に一瞬にして顔が熱くなった。
言われた言葉にショックで固まっていると、長い指の綺麗な手が私とナンパ男の間を遮るように差し出された。
「お客さま、2、420円になります」
静かだけど抗えない音質で、男は眉を顰めながらもカードを竜基さんに手渡した。
「ふうっ」
思わず安堵のため息をつくと竜基さんは小さな声で「よくできました」と耳元でささやいた。
耳は反則だよ。
顔だけでなく身体中が熱くなった。