1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜
そして今、暖かい温泉に足を入れている。

そう、足湯。

芦ノ湖で遊覧船に乗ったあとワカサギの天ぷらと蕎麦を堪能し寄木細工の工房へ行き帰る前に足湯でまったりしているところだ。

「デートとか言いながら仕事の延長に付き合わせて悪いな」

「遊覧船に乗ったのも初めてだし、ワカサギも初めて食べました美味しかった。何より寄木細工が素敵です。ぐい呑みも洒落ていてそれでいて暖かい感じがして良かったです」

「寄木細工や鎌倉彫、そしてガラスなら江戸切子や薩摩切子なども使用したいと思っているんだ。並べておくだけでもインテリアになるしね」

日本酒のみを扱うショットバーを作るらしく、今日は寄木細工を見る為に私を誘ってくれたようで全然関係はないけど、新しいプロジェクトにほんのちょっとでも携わることができるのは嬉しい。いつか開店した時、寄木細工のぐい呑みでお酒を飲めたらいいなとと思う。

もうその頃には店主と客という関係だとしても。

帰りにはレストランでテーブルマナーのおさらいをしながら食事をして、わさび漬けとかまぼこを購入して帰路に着いた。




「飲みやすい」

「本当だね、それにのぞいた時の景色がいい」

かまぼこにわさび漬けをのせて口に入れるとかまぼこの甘さにワサビ漬けの優しい辛さがマッチして日本酒にとても合う。

「わさび漬けも美味しい、ほかほかご飯にも合うよね」

「来週は江戸切子の工房に行こうか」

「はい」

またデートできる。そのことが単純に嬉しかった。

「その表情、反則」

竜基さんはそう言うと私を抱きしめた。

「今日のハグと」

「んっ」

自分が漏らした息に興奮してしまう。

絡められた舌先から身体中に甘い痺れが広がっていく。さらに竜基さんの唇は私の下唇を軽く甘噛みしたあと顎先から喉に移動して行く。

気持ちいい、もっとしてほしいと思った時、着信を知らせるバイブ音が響いた。

竜基さんはハッとしたように私から離れると「今日のスケジュールは終了だよ」と言ってスマホを持ってバルコニーに出た。

お酒だけじゃない火照りを冷ます為にシャワーを浴びる。

流されちゃだめだよね。

電話、誰からだろう?

いつもは、その場で出るのに、私に訊かれたくない話なのかな?

今日楽しかった事が半減してしまいそうで考えることをやめてベッドに入った。
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