1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜
朝は焼き鮭と一口大の豆腐にわさび漬けが添えてあった。

「やっぱり白ご飯にわさび漬けって美味しい」

「確かにわさび漬けだけでもご飯がいくらでも食べられるな」

二人で食べる朝食は美味しいご飯をより美味しく感じさせる。

いつものように部屋から出る前に竜基さんに魔法を掛けてもらってから車で駅まで送ってもらった。



今日は京子とランチで報告会の日だ。
1限目の教室に行くと上野慎一は1番前の端に座っていた。気がつかなかったふりをして中央の窓際に座ると何となく後頭部に視線を感じる。
ゆっくりと振り返ると1番後ろの席に佐藤隆が座っていた。

乃乃の取り巻きは分裂してるのかもしれない。私に危害が及ばなければそれでいいし、分裂したとしてもそれは彼女たちの問題だ。

講義が終わり次の教室へ移動しようと思った時、乃乃が声をかけてきた。

「ジミクラ、お前覚えてろよ。見た目だけよくしたってクズはクズなんだから」

てか、クズはあんたでしょと言いたいか面倒なので相手にする事なく離れようとしたら、腕を掴まれた。

「あんたがペラペラ喋るから迷惑を被ってるんだけど」

「私が言ったんじゃないです。ファミレスで話を聞いた誰かが、共感して流したんじゃないんですか?そもそも彼が居るのに、ゲームの景品として自分自身を捧げるとかビッチって言われても仕方がないんじゃないですか」

乃乃は真っ赤な顔で右手を振り上げる。

竜基さんに教わった所作で振り下ろされた手を外から大きく振り払うとその衝撃で乃乃がよろけて膝をつく形になった。
地面に四つん這いになっている乃乃を無言で置き去りにして次の教室へ向かった。

京子との待ち合わせのファミレスに行くと佐藤隆は他の女子と一緒にいた。
幸い佐藤隆に見つかる事なく京子が待っている席につけた。

「見たあれ」

京子は自分自身を指差して自分の体を突き抜けた後ろにいる二人を指した。

「乃乃とは別れたってこと?」

「まぁ、ノノビッチとか言われちゃってるし佐藤って本気でチャラそうだからね。乃乃のスペアなんていくらでもいるんじゃない」

ていうか、ジミクラよりノノビッチの方が語呂がいい気がする。

「あいつらのことはいいとして、長友さん情報は?」

「別に、楽しくやってるよ」

「えー、その楽しい部分を知りたいじゃん」

楽しく話をしていると佐藤隆と今カノが私たちのテーブルの横を通過するときに佐藤隆が私達に気づくと何故か慌てて今まで肩を抱いていた彼女を押し出して距離を取るとそそくさとレジに向かった。
押し出された彼女は怒ってプリプリしながら一人で出ていった。

「何あれ?」

京子の言葉に私も同意して肩を窄めた。

「あ、乃乃が絡んできたのってこう言うこと?」

「何それ、聞いてない」

京子にさっきあったことを説明した。

「自業自得だよ」

「私もそう思う」
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