1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜
「きちんと話をするべきだと思う。亜由美は何が気に入らない?拗ねているだけでは解決しない。もう大人なんだから」

迎えに来たというか待ち伏せをされて車に乗せられてマンションに帰ってきた。
車中ではお互い一言も喋らず重い空気に息が苦しくなった。
こういう状況だと社会人である竜基さんの方が一枚も二枚も上手になるから、ちょっとずるい。

そして今、リビングのソファに隣り合わせに座っている。

すごく気まずい。
拗ねている、そう言われてしまえばそうなんだと思う。

「すみませんでした。高級なものをたくさん買ってもらって奴隷みたいなものですもんね、あっ、家政婦でしたっけ?ご両親に会うのはちゃんとやります」

感情が追いつかなくて変なことを口走ってしまう。

「奴隷だとか家政婦だとか、そんなことを考えたこともないよ」

「じゃあ、私は何ですか?」

「恋人だろ」

「ちゃんと覚えていたんですね」

「どう言う意味?」

「バイト先の先輩に告白されました」

一瞬、眉が上がったのが見えた。

「それで、どうしたの?その先輩が好きとか?」

「先輩は地味子だったときもずっと親切で好感を持ってました。だけど、今は仮だとしても竜基さんと付き合っていることになってますから、ちゃんと断りました。竜基さんもそういう節度くらい守ってください。たったの1ヶ月くらい部屋に呼んだりするのは我慢してください」

「志摩はそ言うのじゃないけど、この間勝手に上がり込んだことは注意したよ。やっぱり志摩に何か言われたんだな?」

「私の事、彼女と二人で笑っていたんでしょ」

「そんな訳がない、そもそも志摩との見合いを回避するための偽装なんだから」

え?

「ちゃんと説明してください」

盛大に何かを間違えてる?流石に少しトーンダウンしてしまった。

「だから話を聞けと言っただろ」

そう言って竜基さんはあの日、部屋に来た女性の事を話し始めた。

志摩は竜基さんの幼馴染で母親同士が仲が良く四歳年下で高校受験の時に家庭教師をしていたことがあった。その後は竜基さんは大学や短期留学などで疎遠になって今に至っていたが、最近志摩さんが留学していたオーストラリアから帰国したことで竜基さんの母親から志摩さんとお見合いをしないかと言われたということだ。

竜基さんは近所の幼馴染と言う感覚しかなく、ワガママな性格はあまり好きになれなかった。しかも、成人してから会ってもいなかったのにいきなり電話をかけてきて、あまりの自分本位な考えと行動に辟易していた。
さらに母親の前で猫をかぶる志摩に嫌悪感を感じて、母親に恋人がいるからとお見合いを断ったはいいが恋人などいない為、便利屋でも頼んだ方がいいか考えていたら、アンソルスレールで私と契約したと言う事らしい。

「断ったのにどうして?」

「自分が断られる訳がないとでも思ったのか、俺もよくわからないが、アンソルスレールでも他のお客様の迷惑になっていたし、だからあの日も志摩と結婚するつもりはないとキッパリ断ったんだけどな、その前にも会社に来たりすると何かのアピールなのか所構わず抱きつてくるから、そのことも注意したら部屋に上がり込んでくるとか。本当に参ったよ、それで何を言われたんだ?」

抱きつく・・・だから香水の香りが移っていたんだ。
話を聞いてくうちにあの時言われた言葉を思い出す。

「家政婦のミタ」

竜基さんは目を見開いて驚いているのがわかる。

そして、徐々に口元が緩み始めて「酷いな」と笑いながら言った。

笑い事じゃないから

私が不貞腐れた表情をすると「ごめん」と言いながら抱きしめて

「こんな可愛い家政婦さんなら永久に雇いたいよ。それに俺の恋人は亜由美なんだから浮気なんてしないよ」

そう言うと嫌らしいキスで私の思考停止させた。
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