1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜

<偽物でも幸せ>

竜基さんの腕の中で目覚める。
ほんの3週間前はキングサイズのベッドの両端に寝ていたのに今はベッドの中央で抱きしめられる形で眠っている。

しかも昨夜は緊張を解すとか言って何度も絶頂させられてしまった。と言っても、未だ最後まではしていない。契約の仮恋人だからその辺りは線を引いているのかもしれない。
私は、初めては竜基さんにしてもらいたいけど竜基さんからすると重って思われるかも。

今夜はとうとう第一ミッションである竜基さんのご両親との食事会だ。

大丈夫かな、やっぱり緊張する。

「おはよう亜由美、どうかした?」

「うまく出来るかな」

「うまいも何も亜由美は完璧な俺の恋人なんだから自然体で大丈夫だよ」

「うん」と答えてから竜基さんの背に腕を回すと、ギュッと抱きしめられる。

「亜由美は今日は講義は無いんだよね、仕事に行くのが嫌になってきた」

「それはダメだと思います」

「だよな」

ふふふふ
はははは

抱き合いながら笑った後、二人で朝食を作る。
フライパンをトントンとたたきながらオムレツを綺麗に形成している竜基さんの隣でレタスをちぎって簡単なサラダを作る。

朝食を食べた後は竜基さんを見送ると食器を片付けながらリビングを見つめる。
このマンション生活もあと1週間で終わりだ。
いつのまにかここでの暮らしが居心地が良くて

違う

竜基さんの隣が居心地がいいんだ。

このひと月がずっとループすればいいのに。
講義もマナー教室も無いから部屋の掃除を始めるとあっという間に時間が経っていた。

コーディネートカードを使わなくても自分でコーディネートすることができるようになったが、竜基さんのご両親に会うと言うことと懐石のコース料理ということで何度も服を変えて鏡の前で悩み続けていると、竜基さんがいつのまにか帰ってきていた。

鏡の前で服と格闘していた私をドアのところでニコニコしながら立っていた。

「ベージュのかな」

「いつからいたんですか?」

「ちょっと前かな、真剣だったから声を掛けなかった」

「もう」と言って口を尖らせながらも、一人で決められなかったのでよかった。

ベージュのワンピースにボレロを合わせ、メイクをすると偽恋人の出来上がりだ。
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