1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜
「で、何があった?変にはしゃいで違和感がありすぎるんだけど」

やっぱり京子だ、いつも気にかけてくれる。
同い年なのにお姉さん感がハンパない。 

「パーティで元カノが声をかけてきた」

「何だって?」

昨日、言われたことを京子に話すと

「それって元カノさんの独りよがりじゃないの?」

「え?」

「長友さんの部屋で元カノの痕跡とかはあるの?てか、好きな女がいてそれが離婚待ちだからと言って他の女と同棲する?長友さんてそんな人間なの?」

そうだよね、普通に考えたらそうなるけど私と竜基さんは契約の恋人だから。
佳子の離婚が成立するまでのダミーの彼女がいるのはおかしくないし、竜基さんの両親を騙すために不自然にならないように一緒に住んでいるだけだから。でも、そんなことはいくら京子でも話せない。


「でもそれは離婚が成立してなくて、公にできないけど志摩さんとの見合いを回避するために」


「う〜ん、昨日の時点では離婚が成立してたんだよね?だったらコソコソする必要ないし、離婚待ちするほど愛している人が来るのに亜由美を連れていかないでしょ、それってデリカシー皆無人間かやきもちを焼かせたいドS男じゃない?」

「竜基さんはすごく気配りが出来るというか、だからデリカシー皆無人間では無い気がする」

「じゃあドS?」

「それは、まだよく知らないというか」

「それ答えなくていいから」と言って京子が笑い出したの釣られて笑ってしまった。

「でもさ、その元カノって焦ってるんじゃない?」

「焦る?」
どういうこと?

「ヘソの横のホクロなんて、私はこの男とヤッたことがあるのよアピールでしょ、そんな恥ずかしい話をしてまでわざわざマウント取るとか亜由美のことを脅威に感じて焦ってるんじゃない?」

「私が脅威??」

「ヨリを戻すぐらい二人に信頼関係があれば、亜由美に何度も絡まないでしょ」


そう言われるとそんな気がするけど、そもそも私との関係も嘘だから、根本的な部分で違っちゃうんだよね。

それでも、会場で佳子といたのは、お手洗いからの帰りくらいだけど思うけど私が気がつかなかっただけかもしれないし、でも帰りは私と一緒だった。
う~ん・・・ぐるぐるする。

何だか、違和感がある。

「でも佳子はビジネスパートナーとか言っていたし」

「そんなの結婚しなくてもよくない?長友さんのご両親だって政略結婚とかじゃないんでしょ」

「社内恋愛だって言っていた。いまだにラブラブ感が溢れているよ」

「そんな両親が息子に政略結婚なんてさせるかな?」


「そう言われてみるとそうだよね。あれ?」


どんどん目から鱗が落ちまくる。

すごく竜基さんに会いたい。

会って、気持ちを伝えたい。

昨日の“延長”と言う言葉を信じていいのか聞きたい。

「ごめん、京子。帰る」

「はいはい、長友さんにたくさん甘えたらいいよ」

会いたい、好きって言いたい。
誰かをこんな風に好きになったことが無いからどうすればいいかわからなかった。
周りの話を鵜呑みにして勝手に想像してしまった。信じるのは竜基さんだけでいいのに。


気持ちが先走って何時もよりマンションが遠く感じてしまう。

私の誕生日を入力してオートロックを解除する。

エントランスに置いてあるベンジャミンの影に二つの重なる人影があった。
その一人と目が合って思わず今入ってきたドアから外へ出た。

ヒールの踵が溝にはまり脱げてしまったがそのまま走った。



< 55 / 88 >

この作品をシェア

pagetop