1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜

<女達の思惑>

佳子side

学生時代、同じサークルの竜基が好きだった。
でも彼は私をサークルの仲間の一人としてしか思っていないのが分かっていたら変に告白として気まずい思いをするくらいならと気持ちを隠してお互い違うパートナーと学生時代を過ごした。

お互い家業が飲食関係で業界のパーティで再会した。学生のところに比べると落ち着いた雰囲気で益々素敵になっていた。
学生時代はあきらめたけど、今度はどうしても欲しかった。何度か食事をしてそいう関係になり付き合い始めた。

友人達が次々に結婚をしていくことに焦りを感じた。竜基の家や稼ぎなら結婚相手として十分だったが、結婚の話をだしても無関心でこのままだと友人達に負けてしまうと思った。だから以前から私に好意を寄せているのがわかる料亭のオーナーと付き合い始めた。もちろん、竜基のストックとして。
でも彼は欲しいもの、欲しい言葉を沢山くれる。だから竜基には政略結婚だから仕方が無いと言って彼と結婚した。
竜基を完全に忘れたわけでは無いけど、結婚すれば自然に気持ちは薄れると思っていたのに、彼に愛人がいることが分かった。
それも、私と付き合う前からの関係だった。
彼を問い詰めると私と竜基のことも分かっていて利害関係で私と結婚したが愛しているのは愛人の方だと言われた。
竜基への言い訳として使った“政略結婚”だったが彼にとっては本当の政略結婚だった。

私を愛していない人なんて要らないし、私は竜基を諦めたのにいつまでも縋り付いていた愛人が許せなくて二人からたっぷり慰謝料を取って離婚したあと、長友商店からハガキが届いた。

思わずスマホのアドレスから竜基の名前を見つけるとタップした。


ホテルのラウンジで待っている竜基は昔のままだったが私が傷つけてしまったから少し頑なになっていた。
だから、少しずつ固まってしまった心をほぐしてあげたい。これからは私がずっと隣にいる。


竜基はパーティに随分と若い女を連れてきていた。
綺麗だとは思うけどそれだけ。
中身のなさそうな子だ、竜基との仲はわからないけど、恋人だとしても取り返すことは出来そうだと思ったのに竜基は素直になれないでいた。

付き合うきっかけになったのも、私からのアプローチだった、だから私が動きさえすれば元に戻れる。

と、思っていたのに

マンションに行って竜基の誕生日の数字をオートロックキーに打ち込んだが開錠できない。
念のために私の誕生日の数字を打ち込んだがダメだった。
仕方がなくインターフォンを鳴らすと、エントランスまで降りてきてくれた。

元に戻れる。

私が愛しているのは竜基だけ、今ならはっきり言える。

だけど、竜基は私が二人を天秤にかけていたことを知っていた。

「あまりしつこいと警察に通報する」

私のことをストーカーか何かのような言い方をして私の前からいなくなった。


どうしてあの時、彼を選んでしまったんだろう。


どうして竜基を手放してしまったんだろう。


走り去る竜基の背中を見つめながらマンションを出た。
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