1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜

<執着の先>

竜基さんのご両親が搭乗した飛行機がどんどん小さくなっていくのを見送っている。

竜基さんと本当の恋人同士になった後、竜基さんのお母様から志摩さんのことで謝罪をされた。
別に、お母様が悪いわけではなく暴走した志摩さんが悪いし、そもそもその時は契約の仮彼女で騙していたという負い目もあって返事に困ってしまった。
さらに高級ブランドのポーチを頂いてしまって本当に恐縮してしまった。

「竜基を宜しくね、今度は二人で遊びにきてね」と、満面の笑みでゲートを潜って行った。


もう完全にご両親が乗った飛行機の機影が見えなくなるとホッとしたよりも少し寂しい気持ちになった。

「仲が良くて素敵なご両親ですね」

「そうかもな。帰ろうか」

首都高に入ると徐々に車が多くなってきた。

怒涛の1ヶ月だった。
竜基さんのご両親に疑われないように始めた同居は帰国と共に終了だろうか。

終わりたくない。

ハンドルを握る竜基さんの横顔を盗み見てから車窓をゆっくりと流れる景色を眺めていた。

「このまま、一緒に暮らさないか」

いいの?
声が出ない。

一緒にいたい。

竜基さんの横顔を見つめると一瞬目線だけが流れる。

「もちろん亜由美が学生だということも承知しているし一緒に暮らすことで負担に感じさせてしまうことがあるかもしれない。それでも、一緒に居たい」

「私も・・・」
でも、そうなると

「じゃあ今度の3連休に秋田に行こう」

「いいの?」

「一緒に住むのならきちんと亜由美の両親に挨拶しないといけないだろ」

「うん」

よかった。
「ありがとう、竜基さんが好きで一緒に居たいと思う気持ちは強いけど両親のおかけで今ここにいられるから一人では決められないと思ったから」

「当然だろ、もし俺に娘がいて知らない男と同棲してたらその男を殴りにいくかもしれないし、そもそも同棲なんて認めないな」

「認めてもらえないとどうするの?」

「うーん、惜しみない努力をしよう」

ぶはっ

二人で吹き出してしまった。

「夏休みには帰省したのか?」

「お中元のアルバイトをしていたから帰ってないです」


「そうか、ご両親も亜由美が帰省して喜んだと思ったら俺によって地獄に突き落とされことになるな」

「あの、私は金曜日の講義の後に先に帰省して何となく話をしておくね」

「そうしてもらった方がいいかもな。なんか、情けなくてごめんな」

なに・・・?
こんなに自信がなさそうな竜基さんを見るのは初めてかも。
かわいい。

「うん、私も竜基さんと一緒に居たいから頑張るから」

嬉しいけど、私も本当は緊張してきた。

首都高を降りて国道に入ると街並みに光が溢れていた。
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