1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜
真っ直ぐに竜基さんの胸の中に飛び込むとしっかりと受け止めてくれた。
「亜由美に何か用事でも?」
竜基さんの胸に顔を埋めて見たくないものを遮断しているから、二人の表情は見えないが竜基さんの声はあくまでも落ち着いている。
しばらくの間が開き「謝罪をしたくて」と弱々しい声が聞こえてきた。
いつも堂々としてクラスの人気者だった彼の声が今は小さく自信なさげに聞こえる。
竜基さんは小さく「もしかして例の?」と聞いてきた。
中学の時に受けた傷のことは話してある。
この状況で察してくれたことが嬉しい。
言葉に出すのは苦痛だから。
「君は?」
落ち着いた穏やかな口調で竜基さんは対応しているが、その反面私はひたすら目も心も閉ざして竜基さんの腕の中に逃げて隠れている。
「松下さんの同級生の坂口です。ただ、一言謝りたいことがあって」
声の揺れでわかる。
別に恐る人じゃない、だけど集団になると・・・
「わたしは長友と言います。これから亜由美のご両親と大切な話をしなくてはいけないのであまり時間はありませんが」
「すみません」
竜基さんは私の背をぽんぽんと優しく叩くと
「大丈夫だよ、ただここで話を聞いて過去は過去として昇華させた方がいい」
そう耳元で囁くと、坂口君に向かって
「ここは少し邪魔になるから少し端に寄ろう」
と何となく拍子抜けな話を始めて少し可笑しくり思わずふっと声が出てしまった。
竜基さんに肩を抱かれて道の端に移動すると両肩を支えるように坂口君と向かい合わせになるように体を移動させられた。
目の前の彼はあの日、酷いことを言った時とはまるで違う自信のなさそうな表情をしていた。
「ちょうど、本屋があるからわたしは本屋に行ってる」
そう言うと竜基さんは歩いて行った。
しばらくの沈黙ののち、坂口君が頭を下げた。
「あの時は本当にゴメン、まさかあんなふうに広まって・・・イジメのようになるなんて思わなかったんだ」
上野慎一や井口乃乃を思い出す。
勝手に攻撃をしてきたくせに自分の都合のいいような言い訳をする。
「だから?今更過去は変えられない」
「うん」
「何であんな酷い言葉」
「うん、ごめん。本当は可愛いと思ったんだ」
え?何それ。
返す言葉が見つからなくてだまっているとさらに話を続けている。
「クラスの男子に人気があったんだよ」
「誰が?」
「松下さん」
そんなの知らない。
「だから、どうして?」
「思わず見惚れてしまった時、クラスの男子に小突かれて焦ってあんなことを言ってしまった」
「私は何もしてないのに」
やったことといえば、坂口君に可愛いと思って欲しくておしゃれをしただけなのに。
「謝ろうと思っても避けられて、クラスの奴らにも注意しようと思っても、最初のきっかけが俺の言葉だったから言えなかった。本当にゴメン」
「くだらない」
私の言葉に一瞬はっとしたような表情をした。
傷つけられたことが怖くて、さらに傷つくのが怖くて逃げていた。
もっと早く話をすれば良かった。
でも、竜基さんと知り合わなければ話を聞こうとせずにずっと下を向いて生きていたかもしれない。
「もう、謝らなくていい。過去のことは許さないから。でも、許さないという感情もそれはもう過去のことだから」
「ありがとう。長友さんだっけ、付き合ってるの」
「うん」
「そっか、大人で素敵な人だね」
そう、本当に素敵で私なんかでいいのかって思っちゃうくらい素敵ですごい人。
「これからは坂口マートに買いに来てよ。親父が春に亡くなって俺が跡を継いだんだ」
「気が向いたら」
そう答えると坂口君がニッコリと微笑んだ。
昔、好きだった表情だ。
私は本屋で単行本を見ている竜基さんの元に走って行った。
「亜由美に何か用事でも?」
竜基さんの胸に顔を埋めて見たくないものを遮断しているから、二人の表情は見えないが竜基さんの声はあくまでも落ち着いている。
しばらくの間が開き「謝罪をしたくて」と弱々しい声が聞こえてきた。
いつも堂々としてクラスの人気者だった彼の声が今は小さく自信なさげに聞こえる。
竜基さんは小さく「もしかして例の?」と聞いてきた。
中学の時に受けた傷のことは話してある。
この状況で察してくれたことが嬉しい。
言葉に出すのは苦痛だから。
「君は?」
落ち着いた穏やかな口調で竜基さんは対応しているが、その反面私はひたすら目も心も閉ざして竜基さんの腕の中に逃げて隠れている。
「松下さんの同級生の坂口です。ただ、一言謝りたいことがあって」
声の揺れでわかる。
別に恐る人じゃない、だけど集団になると・・・
「わたしは長友と言います。これから亜由美のご両親と大切な話をしなくてはいけないのであまり時間はありませんが」
「すみません」
竜基さんは私の背をぽんぽんと優しく叩くと
「大丈夫だよ、ただここで話を聞いて過去は過去として昇華させた方がいい」
そう耳元で囁くと、坂口君に向かって
「ここは少し邪魔になるから少し端に寄ろう」
と何となく拍子抜けな話を始めて少し可笑しくり思わずふっと声が出てしまった。
竜基さんに肩を抱かれて道の端に移動すると両肩を支えるように坂口君と向かい合わせになるように体を移動させられた。
目の前の彼はあの日、酷いことを言った時とはまるで違う自信のなさそうな表情をしていた。
「ちょうど、本屋があるからわたしは本屋に行ってる」
そう言うと竜基さんは歩いて行った。
しばらくの沈黙ののち、坂口君が頭を下げた。
「あの時は本当にゴメン、まさかあんなふうに広まって・・・イジメのようになるなんて思わなかったんだ」
上野慎一や井口乃乃を思い出す。
勝手に攻撃をしてきたくせに自分の都合のいいような言い訳をする。
「だから?今更過去は変えられない」
「うん」
「何であんな酷い言葉」
「うん、ごめん。本当は可愛いと思ったんだ」
え?何それ。
返す言葉が見つからなくてだまっているとさらに話を続けている。
「クラスの男子に人気があったんだよ」
「誰が?」
「松下さん」
そんなの知らない。
「だから、どうして?」
「思わず見惚れてしまった時、クラスの男子に小突かれて焦ってあんなことを言ってしまった」
「私は何もしてないのに」
やったことといえば、坂口君に可愛いと思って欲しくておしゃれをしただけなのに。
「謝ろうと思っても避けられて、クラスの奴らにも注意しようと思っても、最初のきっかけが俺の言葉だったから言えなかった。本当にゴメン」
「くだらない」
私の言葉に一瞬はっとしたような表情をした。
傷つけられたことが怖くて、さらに傷つくのが怖くて逃げていた。
もっと早く話をすれば良かった。
でも、竜基さんと知り合わなければ話を聞こうとせずにずっと下を向いて生きていたかもしれない。
「もう、謝らなくていい。過去のことは許さないから。でも、許さないという感情もそれはもう過去のことだから」
「ありがとう。長友さんだっけ、付き合ってるの」
「うん」
「そっか、大人で素敵な人だね」
そう、本当に素敵で私なんかでいいのかって思っちゃうくらい素敵ですごい人。
「これからは坂口マートに買いに来てよ。親父が春に亡くなって俺が跡を継いだんだ」
「気が向いたら」
そう答えると坂口君がニッコリと微笑んだ。
昔、好きだった表情だ。
私は本屋で単行本を見ている竜基さんの元に走って行った。