スパダリ部長に愛されてます
「ここなんだ。」
部長がすごい家に住んでるらしいという噂は聞いたことがあったけど、会社の物件の高層マンションだった。
想像していたよりもさらに上で、首を2度ぐいっと持ち上げる
東京にはよくある高層ビルとはいえ、庶民には慣れないもの。一番上は雲の上のようだ。

なかなか豪華な雰囲気のエントランスと外観で、それだけで圧倒される。
そうよね、部長だもんね。
にしても、30代前半で部長って、すごいなぁ。

部長に促されて、エントランスに入る、
部長が受付のコンシェルジュの所に行き、こちらを見ながら話をしている。
「準備してるから、ここで待っててもらえる?」
エレベーターホールとは反対側に落ち着いた空間が拡がっていて、
本や雑誌、洋書などもたくさん置いてある。
壁の液晶ディスプレイからは洋画が流れていて、快適すぎて何時間でも待てそうだ。
「じゃぁ、10分ほどで降りるから。またあとで。」と部長が言って、高層階行きのエレベーターホールに向かった。

所作の美しいコンシェルジュさんが、飲み物を出してくれ、案内されたソファで座って待つ。
美味しいオレンジジュースとラウンジの空間を満喫していると、
10分かからないうちに部長が降りてきた。
「待たせてごめんね。
よし、行こうか。
ここからすぐだから。」
ヨガの時に着ていたトップスを質のよさそうなグレーのタートルネックに着替えただけなのに、
やっぱりかっこいい。
ぼ-っと見とれていたら、怪しまれてしまった。

マンションを出ると、
「マット貸して」と言われ、するっと私のヨガマットを持ってくれた。
あっという間に、空いた手に部長の手が触れ、自然に手を繋がれた。
「ちょ、部長??」
「ん、部長じゃないだろ。」
「け、賢二さん??これは?」
じっと繋がれた手を見つめる私に、
「いやなら言って。」と見つめながら、かっこよく返された。
えーーー、ど、どうしよう。
繋がれた手を見つめていたが、視線を感じて部長を見上げる。
にこっと微笑まれて、恥ずかしくてまた下を向いてしまった。
どうしようもなにも、部長にこうされることが全然いやじゃない自分に戸惑っていた。

より強くぎゅっと手を繋がれて、
何かいろいろと話しかけられた気もするけど、何の話をしたか覚えていない。
あっという間にお店に着いていた。
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