スパダリ部長に愛されてます
お言葉に甘えて家まで送ってもらうことにした。
帰りも当然のように手を繋がれる。
お酒に酔って、2人の手は熱くなっている。
11月下旬の外のひんやりとした空気が熱い身体に気持ち良い。
お店の中での饒舌さがうそのように、2人とも無言で歩く。

まだ家に着かなければいいのに、と思うけれど、
あっという間に、見慣れた自分のマンションに到着した。
「賢二さん、ここです。」
右手でマンションを指さしながら言った途端、ふわっとその手を引き寄せられた。
「え?」と思うと、すっぽりと部長の胸の中に包まれていた。

いや、じゃないけど、でも、どうしよう。
酔った頭では何もできず、
腕をまわすでもなく、拒否するでもなく、部長の胸の中で立ち尽くしていた。
しばらく抱きしめられたあと、
部長が「ごめん」と言って、少し身体をはなす。
部長を見上げると、じっと見つめられ、形の良い唇が降りてきた。
キスされると思ったら、おでことこめかみ辺りに1回ずつ口づけをされた。
最後に、もう一度強く抱きしめられ、
耳元で「今日はありがとう。」と言われた。
「こちらこそありがとうございました。ごちそうさまでした。」
部長を部屋に上げようか、お茶を出そうか、とも思ったけれど、
さすがにいきなりすぎるかと思い、さっと身を引いて、頭を下げる。
「部屋に着いたら、メールして。」
「はい。賢二さんも。
おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
私がエントランスから見えなくなるところまで、部長は見送ってくれていた。

部長はアメリカ生活が長かったから、アメリカ式の挨拶かしらね、
とキスの理由を考えながら、その場から立ち去る。
< 14 / 50 >

この作品をシェア

pagetop