スパダリ部長に愛されてます

会社にて

賢二side

翌週月曜日。
ここは西新宿にある新宿YZビル。
その20階から28階に、2人が働く吉住不動産東京本店がある。
旧財閥の1つ吉住グループは、鉄鉱海運をはじめ不動産建設小売業まであらゆる分野を網羅している。

都市開発事業部本部長の新山賢二は、自分の席で苦悩していた。

やばい。

会社の部下に手を出すことなんて無いと思っていたし、
何度言い寄られても、完璧に逃げて来た。
しかし、これはやばい。

土曜日、ヨガスタジオに着いた途端、姿勢の良い古谷さんに挨拶されびっくりした。
以前から、古谷さんが姿勢が良いな、スタイルが良いなとは思っていたけれど、
まさか、ヨガインストラクターをしていて、こんなに近くにいたとは。

でも、誰にも言わない約束はしたし、2人だけの秘密だ。

古谷さんはオフィスとは何もかも雰囲気がちがっていた。
寡黙で落ち着いた印象だったが、
昨日はよく喋って、よく笑ってくれた。
どのシーンを思い出しても顔がにやけてしまうが、
ぐっと抑えて、パソコン画面を睨みつける。

だが、どんなにあらがっても、一昨日の洋子さんが頭から離れない。
一昨日はよく我慢できたと自分でも思う。
ヨガウェアを着た古谷さん。
ケイコ先生のウェアとたいした違いもないのに、目が離せなかった。
美しいボディラインがはっきりと出ていた。
女性らしい凹凸のあるラインがとてもきれいだった。
あれで、他の奴らの前には出て欲しくない。

いつもはきちんとまとめた長い黒髪も、
さらりとおろしたり、ゆるくまとめたり、片側に流したり、
自由自在に軽やかに動いていて、指で触れて、絡ませたいのをぐっと抑えていた。
レッスンの最中も、背中や腰のあたりを触ってくるから、
いろいろと己自身に言い聞かせるのが大変だった。

触れたい欲望と常に戦っていた。

ここ数年、仕事に夢中で、修行僧のように何も感じないかと思っていたが、
久々に身体の芯が熱くなるのを感じた。
これは落とすしかない。
とりあえず、家もわかったし、連絡先も聞けた。
帰る間際に抱きしめて、唇を落とした時の反応からも、嫌われてはいないと思う。
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