スパダリ部長に愛されてます
その時のいろんなことが思い出されて、手が震えてきたので、
カウンターの下でぐっと力を入れて両手を握りしめていた。

顔を上げることができず、部長の顔を見れないと思っていたら、
握りしめた両手を暖かい部長の手がそっと包んでくれた。

「大丈夫だよ。
洋子さんのことは、ちゃんと見てるから。
見てる人は見てる。
わかってる人はわかってるからね。」

顔を上げて、優しく微笑む部長を見たら、
我慢していた涙がこぼれ落ちた。

「その後、心機一転、転職して引越しもして、ヨガ教室も場所を変えたんです。」

「今、思うと私が弱かったんです。
ちゃんと正々堂々としていたら良かったのに、
誰にも信じてもらえなくて。
いえ、信じてくれる人がいたのに、その人たちを裏切ったんです。」
一気に感じたままに言葉にしていく。
でも、時間が経つとわかる。
私のやり方も悪かったんじゃないか。
もっと周りに助けを求めても良かったんじゃないか。
もっと周りを信じて、素直に話をしても良かったんじゃないか。
ぐるぐると迷いが溢れてくる。

「すみません。
ずっと一方的に話しちゃいましたね。
辞めたことをこんな風に人に話したのははじめてです。」
ちらっと部長の表情を確認すると、優しく微笑んでくれていた。
すごく安心する。
ほほの涙を拭いながら、
「泣いてスッキリしちゃいました。
ごめんなさい、泣いてしまって。
なんか、恥ずかしい。」
部長に恥ずかしい思いをさせていないかと、店内をちらっと見回す。
にぎやかな店内の誰も私たちを気にはしていないようで安心した。

2回目の食事は、終始私の話で終わってしまった。
最後に、「困ったことがあったら、遠慮せず言って。
困ったときは頼っていいから、遠慮しないこと。」
じっくり目を見て、私がうなずくまで念を押された。
「ありがとうございます。」

一方的に話し続ける私を優しく見守ってくれる部長がただただとてもありがたかった。

帰りも家まで送ってもらい、温かく優しく抱きしめられ、前回と同じようにおでこと頬にキスをされてお別れした。
「あたたかくして、ゆっくり休んで。」
いつまでも部長の言葉が私をふんわりと包み込んだ。
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