スパダリ部長に愛されてます
レッスンがはじまってしまえばこちらのもの。
だいたいは昨日練ったシナリオ通りに進んでいく。
ケイコ先生にも了承を得ているものだから、きっと大丈夫。
ポーズの合間におしゃべりも挟みつつ、
体に触れてサポートしたり、あっという間の60分だった。
あぐらを組み、最後の挨拶を終え、レッスンを終わる。
「今日が賢二さんにとって素敵な一日になりますように。
ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」

マットを片付けるが、
なんとなくお互いに立ち去りがたくて話し込んでしまう。

「ほんとうに背中が硬いですね、びっくりしました。
お仕事の合間に、ストレッチとかすると良いですよ?
でも、ずっとお忙しそうですもんねぇ。」
ぶつぶつと悩む私を部長がやわらかく見守ってくれる。

時間も迫ってくるため、
「今日はありがとうございました。
とっても緊張しましたけど、とっても楽しかったです。
賢二さんの違う一面を見れて良かったです。」
切り上げようと今日の感想を素直に告げてみる。

一瞬、真剣な表情になった部長が、戸惑いながらまっすぐとこちらに視線を流してきた。
「ヨーコ先生、この後は?」
「もう終わりです。今日は帰ります。」
「そうか、良かったら少しお茶でもしないか?」
「え、えーっと」
急なお誘いで動揺してしまう。
あ、でもそんな深い意味はないかも!?
会社では言わないように、とか??
そうね、私も会社の人が来ると困るかもしれないし。
少し話をしておこう。
「もちろん、いやならいやで、、、」
一瞬悩む私を見て、焦ったように部長が付け足すので、慌てて返事をした。
「いえ、大丈夫です!行きましょう!」
会社と違って、不安げな面を見せる部長に戸惑ってしまったけど、
嬉しさが勝って、大きな声になってしまった。

「じゃぁ、準備ができたら、外で。エレベーターホールのところで良いかな。」
「はい。わかりました。」
余裕のある大人の表情に戻って、更衣室へと立ち去る部長を後ろから見送る。
ほんと、かっこいい。
レッスン中は緊張が勝って、あまり意識してなかったけれど、
緊張もほどけて近くで見たら、ほんと、かっこいい。
しばらく立ち止まって、改めて何度も噛みしめてしまった。
会社の女性たちが騒ぐのも当たり前だわ。
< 7 / 50 >

この作品をシェア

pagetop