スパダリ部長に愛されてます
スタジオを出て、ビルの共有廊下を進む。
少し離れたエレベータホールの端でたたずむ部長が見えた。
手元のスマホを見ていたようだけど、私が出てきたのに気づいて、顔をあげ、
にっこりとほほえみ、片手をあげてくれる。
どんな些細な仕草も、本当にかっこいい。
うっとりと見惚れてしまう。
照れつつも、軽く頭をさげ、部長のところへ駆け寄る。
「ごめんなさい、遅くなりました。」
「ううん、大丈夫だよ。
こっちが誘ったんだし。」
部長が私の私服を上から下まで見て、
「そういうのもいいね、かわいいよ。」
と自然に褒めてくれた。
「ちょ、ちょっとやめてください。」
顔が赤くなるのがわかる。
今日の私は会社のスーツ姿とは全く違い、カジュアルな格好だ。
パーカー付きのトレーナーにコートをはおり、ジーンズにスニーカー。
でも、それはお互い様。
部長も先ほどのヨガウェアの上にウールのあたたかそうなチェスターコートを着ている。
そして、何よりネイビーのストライプのマフラーがとても似合っている。
あとは、ジーンズにスニーカー。
これもまた普段よりカジュアルな感じがとってもかっこいい。

2人して同じようにヨガマットを肩にかけ、なんかカップルみたいと思ってにやけてしまう。
すると、「なんか俺たちの格好、似てるな」と部長が照れくさそうにつぶやいた。
私も思わず、「ねぇ、そうですよね。私も今、同じ事思ってました。」
見つめ合いながら、二人で笑い合う。
あーーー、部長と二人なんて信じられない。
今日はなんだか良く笑う日だ。
今日は良い日に違いない。
私が部長と二人きりで過ごせるなんて!今日は楽しむしかない!

部長がエレベーターのボタンを押し、二人で並んで上がってくる数字を待つ。
エレベーターが上がって来ると、生徒さんが数人降りてきた。
その中には、いつも来てくださる60代ぐらいの上品な女性の山岡様がいる。
「あら、賢二さん、それにヨーコ先生??」
私たちの顔を交互に見て、もの言いたげだったけれど、にっこりと笑顔になってお見送りされた。
「うふふふ、いってらっしゃ~い。」
「「失礼します。」」部長と2人同時に頭を下げて、エレベーターに乗り込んだ。
それにしても、部長は本当に人気者なのね。
受付のマキちゃんをはじめ、ヨガ教室の他の生徒さんとも仲良しなんて。
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