Cherry Blossoms〜白銀の女神〜

「まさか、こんなところで偶然本田先生に会えるとは思っていませんでしたよ」

「それは僕もです。驚いて、言葉を失ってしまいました……」

桜士はそう返しつつ、疑問をぶつける。何故北海道にこのメンバーが集まっているのかというものだ。ここは当然戦場ではない。

「皆さんは、お仕事ですか？」

「いや、思いっきりプライベートだよ」

オリバーがメニュー表をペラペラとめくりながら答える。その隣に座っていたナタリアが口を開いた。

「ヨハンが提案したの。最近、一花がどこか落ち込んでいる様子だから、気分転換に旅行でも行かないかって」

「ほら、あの産婦人科の先生だよ」

ヨハンが、スイーツをリティクと一緒に選んでいる一花を見ながらどこかぶっきらぼうに答える。それを聞いて、桜士は「ああ……」と呟いた。

二週間ほど前、結婚したことにより退職したはずの折原藍（おりはらあい）が訪れ、自身の体のこととお願いを話して帰っていった。その内容はあまりにも信じられないもので、一花はずっとそれを考えていたのだろう。