Cherry Blossoms〜白銀の女神〜

公安は役者に似ている。与えられた情報から台詞を作り、自分の役を演じる。今の十は完璧な医学部を目指す社会人を演じていた。

「勉強は大変だろうが、頑張れよ！」

「わからないことがあったら、何でも聞いてね」

モニカとクラウディオが十に声をかけ、一花もどこか嬉しそうに十を見つめている。彼女の目はまるで、何かを可愛がっているような目だった。それに桜士はモヤモヤとした気持ちを覚えてしまう。

（まさか、四月一日先生は十のことを気になっているんじゃ……）

不安から、桜士は睨むように十を見つめた。上司からの圧に気付いた十は、肩をびくりと震わせた後、「すみません、お手洗いに……」と言い席を立つ。

緊張と幸せが入り混じった午後だった。