Restart~あなたが好きだから~
式からの帰り道、電車に揺られながら、七瀬はひとり考えていた。
「氷室は当たり前だけど、大学当時からプライムシステムズ創業者の息子であるという自分の立場を強く意識してた。アイツは父親の会社を自分がいずれ継ぐことになることも、でもまだ若い会社がゆえに、そんな簡単に世襲が認められない可能性があることも理解していた。だからアイツは自分を高める努力を、学生時代から怠らなかったし、サークルを立ち上げたのも、将来、自分と一緒にやってくれる人材を発掘しようという狙いがあったのは間違いない。」
先日の澤崎との会話が甦って来る。
「アイツとはとにかく気が合って、ずっとつるんで大学生活を過ごした僕は、どうやらその候補のひとりとして見初められ、そしてアイツに誘われるままにこの会社に入った。でも、プライベ-トでは親しい関係を続けて来たけど、仕事上ではほとんど接点がないまま、時が過ぎて行った。それが奴が専務になることになった4年前、僕はそれまで縁もゆかりもなかった人事部に異動になった。異動早々に専務室に呼ばれた俺は氷室にこう言われた。『本当はお前を俺の秘書にするつもりだった。ここまでお前にはウチの会社の肝になる業務を一通り経験してもらって来た。それは俺が取締役になった時、その経験をもとに、俺のバディになってもらおうと思ってたからだ。』って。」
「えっ?」
「そう、アイツは最初っからバディとしての秘書を求めていて、僕にその役目を担わせようとしたんだ。『でも親父がどうしても自分の秘書である城之内さんを使え、それが絶対にお前の為になると言って譲らなかったんで、仕方なく諦めたんだ。それでお前を人事部に突っ込んだ。俺の将来の手足になる人材を見繕っておいてくれ。』って言われて。そして2年後にはなんといきなり次長に抜擢されて、今日に到るってわけなんだよ。」
(専務は最初から秘書にバディであることを求めていたなんて・・・。)
「氷室は『新米専務取締役の秘書としては、城之内さんは最高だった。感謝しかない』と言っているが、それでも、理子にはやっぱり奴のバディは荷が重すぎたから、理子の退職を機に自分が求めている秘書を探し始めた。それで僕が藤堂さんを推薦したんだ。」
「どうして私、だったんですか?」
問い掛ける七瀬に
「まず君が能力的に、氷室の求める秘書像に十分マッチすると思ったことが第一。その上で、今の奴には絶対に女性秘書の方がいいというか、必要だと思ったんでね。」
「えっ?」
「藤堂さんなら、年齢的にもちょうど合うし、氷室のお眼鏡にも絶対適うだろうから。」
澤崎は答えると、いたずらっぽく笑って見せた。
「氷室は当たり前だけど、大学当時からプライムシステムズ創業者の息子であるという自分の立場を強く意識してた。アイツは父親の会社を自分がいずれ継ぐことになることも、でもまだ若い会社がゆえに、そんな簡単に世襲が認められない可能性があることも理解していた。だからアイツは自分を高める努力を、学生時代から怠らなかったし、サークルを立ち上げたのも、将来、自分と一緒にやってくれる人材を発掘しようという狙いがあったのは間違いない。」
先日の澤崎との会話が甦って来る。
「アイツとはとにかく気が合って、ずっとつるんで大学生活を過ごした僕は、どうやらその候補のひとりとして見初められ、そしてアイツに誘われるままにこの会社に入った。でも、プライベ-トでは親しい関係を続けて来たけど、仕事上ではほとんど接点がないまま、時が過ぎて行った。それが奴が専務になることになった4年前、僕はそれまで縁もゆかりもなかった人事部に異動になった。異動早々に専務室に呼ばれた俺は氷室にこう言われた。『本当はお前を俺の秘書にするつもりだった。ここまでお前にはウチの会社の肝になる業務を一通り経験してもらって来た。それは俺が取締役になった時、その経験をもとに、俺のバディになってもらおうと思ってたからだ。』って。」
「えっ?」
「そう、アイツは最初っからバディとしての秘書を求めていて、僕にその役目を担わせようとしたんだ。『でも親父がどうしても自分の秘書である城之内さんを使え、それが絶対にお前の為になると言って譲らなかったんで、仕方なく諦めたんだ。それでお前を人事部に突っ込んだ。俺の将来の手足になる人材を見繕っておいてくれ。』って言われて。そして2年後にはなんといきなり次長に抜擢されて、今日に到るってわけなんだよ。」
(専務は最初から秘書にバディであることを求めていたなんて・・・。)
「氷室は『新米専務取締役の秘書としては、城之内さんは最高だった。感謝しかない』と言っているが、それでも、理子にはやっぱり奴のバディは荷が重すぎたから、理子の退職を機に自分が求めている秘書を探し始めた。それで僕が藤堂さんを推薦したんだ。」
「どうして私、だったんですか?」
問い掛ける七瀬に
「まず君が能力的に、氷室の求める秘書像に十分マッチすると思ったことが第一。その上で、今の奴には絶対に女性秘書の方がいいというか、必要だと思ったんでね。」
「えっ?」
「藤堂さんなら、年齢的にもちょうど合うし、氷室のお眼鏡にも絶対適うだろうから。」
澤崎は答えると、いたずらっぽく笑って見せた。