Restart~あなたが好きだから~
「そしてウチの営業部にも部長や課長の頭越しに、一部の連中に極秘チ-ムとして動いてもらっている。俺が七瀬の後任に、若林を指名したのは、気心の知れた奴をそのチ-ムのリーダ-として使いたかったからだ。だが、昼間の奴からの報告を聞いても、また貴島の話を聞いても、アイツには少々荷が重いようだ。」


「・・・。」


「まさしく七瀬の心配が的中してしまったわけで、そこでお前の出番だ。」


「私、ですか?」


「ああ。七瀬は営業部主任時代に、こちらとも縁が深い。そんなお前に、これからは若林の代わりにいろいろ動いて欲しいんだ。」


「でもそれだと、若林くんが面白くないんじゃありませんか?」


七瀬が不安を口にする。ただでさえ、自分に対抗心というより、敵愾心をむき出しにする若林が、今更自分とうまくやれるとも思えないし、不貞腐れて、この極秘プロジェクトの足を引っ張るような行動に出ないとも限らない。


「そこらへんは、貴島にも協力してもらってうまくやる。心配するな。」


「若林くんの扱いは私に任せてちょうだい。」


圭吾の言葉に頷きながら、愛奈が笑う。


「そういうことでしたら・・・是非お任せください。」


そんな2人の自信たっぷりの表情に、安心したように七瀬は言った。


(営業部の仕事なら、私も自信があるし、たぶんサポ-トに付いてくれるのは田中くんだから・・・秘書の仕事をしながらじゃ、楽じゃないけど、でもきっとやれる。)


七瀬の表情が自信に満ちて来たのを見て、圭吾は満足そうに頷いた。


この後、4人は夕食を共にした。多少、固い話もしたが、大部分は賑やかなトークに終始し、七瀬は貴島姉妹と親睦を深めることとなった。特に妹の奈穂とは、プライベ-トでもいろいろやりとりしようと約束するほど親密になった。が


「これで俺たちは完全にワンチ-ムだ。」


「そうですね。先輩、プロジェクト絶対に成功させましょうね。」


「ああ。」


グラス片手に、顔を寄せ合うように語り合う圭吾と愛奈の姿に、ふと胸がモヤついている自分に、七瀬は気付いていた。もっとも


「藤堂さんは先輩から、名前呼びされてるのね。私なんか、いくら頼んでも、全然呼んでもらえないのに・・・。」


圭吾が席を外した時に、やや酔った愛奈から、そんな嫉妬交じりの言葉を浴びせられたりもしたのだが・・・。
< 131 / 213 >

この作品をシェア

pagetop