Restart~あなたが好きだから~
七瀬と大和は、折ある度にLINEや電話で連絡を取り合いながら、月1~2のペースで会う。そんな関係を続けていた。連絡は七瀬からすることもあれば、大和から来ることもあったし、会って話す内容も仕事のことや、かつて中高時代に幼なじみとしてつるんでいた時のように、他愛のないことが多かった。


そんな時を過ごしながら


「もういいじゃない、私にしなよ。」


と言うきっかけを窺っていた七瀬だったが、ついに意を決して、大和に連絡を取ったのは、愛奈と話した日の夜のことだった。


「今度の日曜、会わない?」


と切り出した七瀬に


『えっ、今度の日曜はちょっと・・・別の日にしないか?』


大和は渋る。だがその彼の返事は、七瀬には織り込み済だった。


「なんか用事あるの?」


『いや、特には・・・でもその日は・・・。』


煮え切らない答えをする大和に


「どうせ、ウチでウジウジしてるだけでしょ。」


七瀬は決めつけるように言う。


『七瀬・・・。』


「そんなことしてたって、何もいいことないよ。とにかく出掛けるから、あんたに拒否権はない。」


その言葉で、七瀬がその日がどんな日なのかを承知の上で、誘って来ているのを悟った大和は


『わかったよ。』


諦めたように答えた。


「じゃ、そういうことでよろしくね。」


大和を押し切り、そのあといくつかのやり取りをして、電話を切った七瀬は


(これでよし。もう後戻りは出来ないよ、七瀬。)


改めて、自分にそう言い聞かせていた。


そして当日、朝早く自宅を出た七瀬は、久しぶりに実家の最寄り駅へ。と言っても、実家に立ち寄る気はさらさらなく、駅で大和と待ち合わせているのだ。


駅に降り立ち、改札口を出た七瀬は、大和の車が見えて来るの待つ。この日は、本来なら大和と弥生の挙式が行われるはずだった。そんな日に、あえて大和を呼び出した七瀬。彼を2度目のドライブに誘い、大和が弥生と将来を誓い合ったあの海岸で、長年心に秘めて来た大和への想いを打ち明けるつもりだった。そうすることで、大和に弥生への気持ちを完全に断ち切ってもらい、自分との未来に目を向けて欲しい、そう思ったからだ。


時計に目をやると、待ち合わせ時間を少し過ぎている。遅刻なんて、大和らしくないなと思いながら、待つこと更に数分。ようやく七瀬の目の前に、車が停まる。


「遅いよ。」


ドアを開け、大和に文句を言った七瀬の目に、後部座席に座る1つの人影が映る。


(なんで、誰か乗ってるの?)


当然の疑問を抱いた七瀬は、次にそれが誰であるかに気が付き


「えっ、なんで・・・?」


と言って固まってしまった。
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