Restart~あなたが好きだから~
「でも・・・。」


「それに、病に打ち勝てたとして、その後の自分の身体が大和さんとの結婚生活に耐えられるかどうか。もちろん大和さんなら、全てを受け入れてくれるでしょう。そんなことは弥生だってわかってた。でも、だからこそ、もう自分は大和さんと一緒にいるべきじゃない、それが彼女の結論だったんです。」


ここで福地は、七瀬を振り向いた。


「それは間違ってませんか?現に突然佐倉さんに別れを告げられて、大和がどんなに悲しみ、苦しんだか・・・。彼の気持ちをあまりにも蔑ろにしてます。」


そんな福地の顔を真っすぐに見て、七瀬は反論する。


「僕もそう思います、でも弥生の気持ちは違ってた。あなたが・・・いたからです。」


「えっ?」


「自分がいなくなっても、大和さんには藤堂さんがいる。そう思ってたんですよ。」


「そんな・・・。」


七瀬は言葉を失う。


「自分が大和さんを振れば、大和さんは自分に失望し、自分に愛想を尽かして、自分を忘れて、なんの障害もなく藤堂さんと結ばれるに違いないって。」


「佐倉さん・・・。」


弥生がまさか、そんなことを考えていたとは・・・その切ない思いに、七瀬は胸をつかれる。


「でもなかなかそうはいかなくて困っていたところに、あなたと出会ったんです。その時に弥生は思ったそうです。あなたを通じてもっと手酷く振ってやろうって。あの日は体調がよく、気分転換に前から見たがっていた映画を見に外出したんです。車イスに乗るのを嫌がって、普通に外出したのはいいんですが、すっかり疲れてしまって。あの時、僕たちが仲良く寄り添っていたように見えたかもしれませんが、それはわざと弥生がそう見せたのと、もう1つ、僕に寄りかかっていなければ、もう立っていられなかったからなんです。」


「・・・。」


「そして大和さんをディスり、僕を医者だと言い、一緒に外国に行くなんて言って、高スペックの男に心変わりした最低の女を演じたんです。それをあなたを通じて大和さんに伝えることで、あなたと大和さんがまた近付くきっかけになればいいと思いながら。あのあと、帰り道で弥生はずっと泣いてました。やっと帰り着いた病室で彼女はこう言ったんです。『これでもう大丈夫。これで私は大和くんにとって、最低最悪の女になった。これでいいの』って。事実、あのことがあった直後に大和さんが正式に婚約解消を承諾されましたからね。」


「・・・。」
< 158 / 213 >

この作品をシェア

pagetop