Restart~あなたが好きだから~
翌日。七瀬一家が、法事の行われる寺院に着いた頃には、施主である祖母以下の列席者たちは、既に控室に揃っていた。まもなく本堂に移動し、読経が始まった。一同が神妙な面持ちで、座っている中、七瀬は正面の祖父の遺影に目をやった。


(お祖父ちゃん・・・。)


祖父との思い出が甦って来る。本当に目の中に入れても痛くないという表現が大袈裟ではないくらい、可愛がってもらった。自分が長じるにつれて、会う機会が減って行ったのは確かだが、それでもたまに顔を出すと、目を細めて、大歓迎してくれた。いつもニコニコしていて、怒った姿など見たこともなかったが


「あんなに子供に対する態度と孫に対する態度が違う人も珍しいよね。」


母親が自分のきょうだい達と話してるのを聞いて、ビックリした記憶がある。


読経、焼香が終わり、その後はお墓に回って、手を合わせた一同は、故人を偲び、思い出を語りあいながら、お斎と呼ばれる食事を摂るべく、会場に移動した。


祖父が健在の頃は、元日に子供、孫たちが祖父宅に集い、賑やかなひと時を過ごし、七瀬たちはそこで祖父母やおじおばたちからお年玉をもらうのが通例だったが、孫たちも段々大きくなり、祖父が体調を崩すようになると、いつしかその慣習もなくなり、こうした冠婚葬祭でないと、なかなか一同が顔を揃えることはなくなった。


祖父も好きだった懐石料理をいただきながら、昨年の一周忌以来の再会となったいとこたちと、話に花を咲かせていた七瀬だったが


「お父さんと違って、私はひ孫の顔を拝ませてもらえて、本当にありがたいよ。」


という祖母の言葉が聞こえて来た。2年前に、祖父が亡くなる直前に結婚した一番年長の従兄に先ごろ、第一子が誕生したことは、七瀬も知っている。ただ、まだ生後間もないその女の子は、この席には彼女の母親と共に不参だったが。


「お父さんは、みんなの前では絶対にそんなことは口にしなかったけど、孫たちがなかなか結婚しないから、やきもきしてたからねぇ。」


更に祖母がそう続けたのを耳にして


(また嫌な方向に話題が向いて行きそう・・・。)


七瀬は気持ちは、思わず重くなる。果たして


「おい七瀬、お前まだ彼氏の1人も出来んのか?」


母親の長兄である伯父が聞いて来る。
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