Restart~あなたが好きだから~
「寒い、ですね。」


「そうだな。」


「この前、一緒に来た時は、蒸し暑いくらいだったのに。」


「それだけ時が流れたということだ。いつの間にか、な。」


前を向いたまま、ふたりは言葉を交わす。少しの沈黙が流れた後、七瀬は圭吾の方を見ると


「ごめんなさい。」


そう言って、頭を下げた。


「七瀬・・・。」


「季節が2つも過ぎてしまうくらい、私グズグズして、あなたをお待たせしてしまったんですね。本当にごめんなさい。」


「いや、お前は何度もちゃんと答えをくれたよ。俺より好きな人がいるって。でもそれを俺が認めないで、お前に迫り続けてるだけだ。むしろ、セクハラで訴えられないだけ、七瀬に感謝すべきなのかもしれん。」


そう言って、一瞬苦笑いを浮かべた圭吾は、しかしすぐにそれを消すと、七瀬の方に身体を向けた。


「自分を真剣に想って下さってる方を、訴えることなんて出来ません。それに・・・私の方も結局、あなたと大和を天秤にかけて来たんです。だから今日は・・・きちんと自分の気持ちをお伝えするつもりで、お誘いしました。」


圭吾を真っすぐに見て、七瀬は言った。そして


「圭吾さんが好きです。」


初めて彼の名前を七瀬は口にして、こう告げた。


「七瀬・・・。」


「私をあなたのパートナ-にして下さい。どうか、よろしくお願いします。」


そう言って、頭を下げた七瀬はすぐに頭を上げると、圭吾を見つめた。


「最愛の婚約者を失って、傷心の幼なじみには、とうとう受け入れてもらえなかったのか?」


「はい。私の気持ちは迷惑だそうです。」


「そうか、迷惑か。厳しいことを言うな。後悔しなきゃいいが・・・。」


「えっ?」


「いや、なんでもない。」


そう言って首を振った圭吾に


「先ほど、お渡ししたチョコはバディとしてのプレゼントですが、パートナ-としてのプレゼントもあります。」


七瀬は更に言う。


「手作りチョコでも作ってくれたのか?」


「いえ・・・私です。」


一瞬、躊躇った後、七瀬は言った。息を呑んだように自分を見る圭吾に


「私を是非、受け取って下さい。」


七瀬は今度は、躊躇うことなく告げた。
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