Restart~あなたが好きだから~
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか。」


自分をじっと見上げて来る七瀬に、圭吾はニヤリと笑みを浮かべたが


「でも、それで本当にいいのか?」


「えっ?」


「それで本当に七瀬は悔いはないのか?」


と尋ねた圭吾の目はまるで、七瀬を射抜くかのように鋭かった。


「・・・はい。」


一瞬、気圧されたように息を呑んだ七瀬だったが、すぐにコクリと頷くと、そのまま圭吾に身を預けて行く。その細い身体をしっかりと抱きしめると


「だったら、俺は遠慮なく、お前をいただくだけだ。」


と言ってまたニヤリと笑う。


「圭吾さん・・・。」


その不敵な笑みを見上げた七瀬がそっと瞳を閉じると、それを合図にしたように、圭吾が彼女の可憐な唇を奪う。この前と違い、七瀬は積極的に自らそれを受け入れて行く。激しく、深くお互いを求め合ったふたりは、やがてどちらからともなく唇を離して、そして見つめ合う。


「七瀬・・・。」


「私を26歳の花嫁にして。」


「そりゃ随分忙しいな。」


「ダメ?」


「お前が本当にそれを望むなら・・・喜んで。」


「嬉しい・・・。」


そしてまた唇を重ねようとしたふたりに


「もういい加減にしなよ!」


鋭い声が飛んだ。ハッとその声の方を見たふたりの視界に、厳しい表情を浮かべてこちらを見ている愛奈の姿が映る。


「愛奈さん・・・。」


驚いたように身体を離したふたりに


「茶番はそろそろ終わりにしてよ、見てると気分が悪くなる。」


愛奈は吐き捨てるように言う。


「貴島。お前、なんでこんな所に・・・。」


愛奈が突然なぜ現れたのか、そんな彼女がなぜ怒りを露わにしてるのか、全く理解出来ずに圭吾が問い掛けると、なんとも間の悪いことに携帯の着信音が割り込んで来る。その音にハッと反応した七瀬は慌ててスマホを取り出して、ディスプレイに表示された名前を見ると、一瞬表情を歪めて、すぐに電話を切り、そしてマナ-モードに切り替え


「すみませんでした。」


と頭を下げる。なんとも気まずい空気が流れるが


「茶番ってどういうことだよ?」


気を取り直したように、圭吾が口を開いた。


「そんなの、あなたたち自身がよくわかってるでしょ?」


「愛奈さん・・・。」


「私、絶対に認めないから、許さないから!」


厳しい表情で言い募る愛奈に、七瀬も言葉を返そうとするが、彼女のバックの中でスマホが暴れ続けている。
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