Restart~あなたが好きだから~
「ところでどうなんだ?幼なじみくんの容態は?」


表情を改めて、尋ねる圭吾に


「変わらず、です。恐らくここ1日2日がヤマ場だろうって。」


伏目がちに七瀬は答える。


「そうか・・・すまないな、こんな時に。」


その圭吾の言葉に、ハッと彼の顔を見た七瀬は


「いえ。私は何日も仕事を休んで病院に詰めることを許されるほど、大和と近しい立場ではないですし、なにより自分がずっと付き添っていることを彼が望んでくれてるのか、自信もありませんから。」


と寂しそうな表情で答える。


「七瀬・・・。」


「だから彼の無事を祈りながら、仕事、頑張ります。よろしくお願いします!」


最後はこう言って、笑顔を見せた七瀬に


「わかった。じゃ、打ち合わせに入ろうか。」


「はい。」


圭吾もあえて、明るい声で応じた。


現状を把握して、デスクに戻った七瀬はまず開けられずに放置されていたメールを確認して、必要な返信や連絡を済ますと、次に各部署からの報告書類の整理に入る。圭吾に上げる必要があるか、自分が処理すれば済むかを仕分けするのだ。そうこうしているうちに、社内はもちろん、取引先からも面会や商談の要望等の連絡が入って来るから、その応対にも追われる。


更に会議の資料作り、商談の場所の手配、スケジュ-ルの調整と言った事務作業も加わる。


(1日休んだだけで、ここまで業務がたまっちゃうんだね・・・。)


さすがに七瀬も内心ため息を吐くが、それでもこの日はたまたま圭吾に外出の予定がなかったので、コミュニケ-ションを取り易かったのは助かった。


昼食を摂るのをうっかりしそうになるくらい多忙な1日となってしまったが、それでも終業チャイムが鳴る頃には、なんとか目途が立った。ホッと一息ついた七瀬は、すぐに立ち上がると、コーヒ-を煎れ、副社長執務室をノックした。


「失礼します。副社長、コーヒ-をお持ちしました。」


「すまんな、ちょうど頼もうと思ってたところだ。」


パソコンから目を離し、笑顔を見せてソファに移動した圭吾の前にコーヒ-を置いた七瀬に


「お前も一緒に飲もうぜ。」


圭吾は誘った。


「ありがとうございます。」


頷いた七瀬は、一旦部屋を出ると、すぐにカップを手に戻って来て、圭吾の前に腰を下ろした。
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