Restart~あなたが好きだから~
「どういうことだ?」


そう問い返した圭吾の表情と口調は当然厳しい。


「私をあなたのパートナ-にして下さい、そうお願いした舌の根も乾かないのに、こんなことを申し上げて、お詫びの言葉もありません。あの時、あなたに申し上げた言葉にウソはないつもりでした。私、本気で一生恋愛しないつもりでした。大和じゃなきゃ嫌、大和しか見えない、そう思い込んで来たんです。」


「・・・。」


「でもそんな私の頑な気持ちに、あなたは入り込んで来た。ビックリしたけど、でも嫌じゃなかった。自分の勤める会社の御曹司さんなんて、とても自分が釣り合うわけない。そう思っても、でもあなたに惹かれて行く自分を止められなかった。バディになれなんて、とんでもないミッションだと思いましたけど、でも『あなたに褒めてもらいたい、認めてもらいたい』、いつの間にか、そう思って頑張っちゃってました。圭吾さんだから、そう思えたんです。」


「・・・。」


「だから、告白しました。26歳の花嫁して欲しいなんて、恥ずかしい我が儘も言いました。なのに・・・大和があんなことになってしまって、生死の境をさまよっていて・・・今の私の正直な気持ちを言えば、大和の側にいたいんです。何もかも放り出してでも、ずっと彼の側にいて上げたいんです。私が側にいたって、何の力にもなれない、そんなことは理屈ではわかってます。でも今、私が大和にしてあげられることはそれしかない。大和を死なせたくないんです、大和が誰よりも大切だから、誰よりも好きだから・・・。」


「七瀬・・・。」


それはあまりに圭吾にとっては、残酷な告白だった。思わず表情を歪める彼を、七瀬は正視出来ず、視線を逸らすが、すぐに懸命にそれを戻して


「その自分の気持ちに改めて気付いてしまった以上、その思いを偽ったまま、あなたのパートナ-にはなれません。ごめんなさい、圭吾さん。許して下さい!」


目にいっぱいの涙を浮かべて、懸命に自分の心情を訴えた七瀬は、深々と頭を下げた。


そして流れる静寂・・・頭を上げようともしない七瀬を、見つめていた圭吾だったが、やがて


「今朝、お前から話があると言われた時、それが別れ話だとすぐにわかったよ。」


と静かに言うと、その言葉を聞いた七瀬は、思わずハッと顔を上げた。
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