Restart~あなたが好きだから~
「だが、議論をして行くうちに、理は俺たちにあるとわかって来たんだろう。賛成派の方が増えて来た。今日、完全に取締役会として了承とまでは行かなかったが、まぁ大きな流れはもう変わらんよ。」


「ならよかったです。」


自信を示す圭吾に、七瀬は安心したように笑顔を浮かべたが、すぐに


「でもそんなトップシークレットを圭吾さん・・・すみません、副社長は一昨日、私に漏らされてしまいました。よろしかったのですか?」


と一転、心配そうな表情になった。


「親父にはお前も含めて他言厳禁とわざわざ釘を刺されてたんだがな。」


「それでは余計・・・。」


「あの時は、話の流れで、どうしてもお前に話さなきゃならなかったし、お前なら話しても絶対に他言しないって自信もあった。それにパートナ-はダメだったが、でもお前が俺のバディであることは変わらん。だから、いずれ話さなきゃいけないと思っていたからな。」


そう言って、七瀬を見る圭吾。その表情から、自分への信頼と優しさを感じ取った七瀬は


「ありがとうございます。」


そう言って頭を下げる。


「おっ、そろそろ行かないとな。七瀬は今日は営業会議はいいぞ。ゆっくり昼飯食って、午後に備えてくれ。」


「かしこまりました。」


「じゃ、行って来る。」


と言って慌ただしく出て行こうとして、ふと足を止めた圭吾は


「七瀬。」


「はい。」


「お前が嫌じゃなきゃ、これからもふたりの時は圭吾さんでいいぜ。マイバディ。」


そう言って、ニヤッと笑うと、部屋を出て行った。そんな彼の言葉に、フッと笑みを浮かべると、七瀬は昼食を摂りに食堂に降りようとするが、ふと気が付いたように、プライベ-トのスマホを取り出してみる。すると大和の母親の礼子から、何度も着信が入っていて、慌ててリダイヤルをする。


「もしもし、おばさん。すみません、着信に気が付かなくて。なにか、ありましたか?」


まさか・・・高鳴る鼓動と湧き上がって来る不安を抑えきれずに、問い掛けた七瀬は


「本当ですか!」


とすぐに一転声を弾ませ、表情を輝かせた。
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