Restart~あなたが好きだから~
営業会議では、ビーエイトとのコラボで開発された新システムの運用状況が報告された。


「運用開始から2週間が経過いたしましたが、現在までなんらの問題点も報告されておりません。」


という技術部からの報告を受け


「これを受けて、営業部といたしましては、第二課におきまして、新システムの売り込み計画を作成中です。早ければ3週間後には、各お取引先への販促活動をスタ-ト出来る予定です。」


営業部長が発言するが


「遅いな、なんで動き出すのにまだ3週間も掛かるんだ?」


圭吾が厳しい声で言う。


「それは、新システムが完全に運用できるかを確認する必要がございましたので・・・。」


「それはもちろんそうだが、販売計画の立案は同時並行でスタ-ト出来ただろう。システムの方に問題が生じれば、その時点で計画を手直しすればいいことだ。違いますか?会田専務。」


そう言って、営業本部長である専務に話を振る圭吾。


「おっしゃる通りです。」


「来週には動き出せるようにしてくれ。二課のみんなにはご苦労を掛けるが、何事もスピ-ドが勝負ですからね。」


「かしこまりました。」


営業部長が答えると


「今回のコラボ先であるビーエイト様は、今後ますます関係を深めて行く事になると思われるお取引先だ。その意味でも、今回は失敗は出来ないからな。よろしく頼むぞ。」


圭吾は一同に念を押すように告げた。その言葉に、思わず会田が厳しい視線を送ったが、圭吾は動じることなく


「では、次の報告を。」


と促した。


(やるじゃないか。)


その様子を黙って見守りながら、氷室社長は内心満足そうに頷いていた。


会議を終え、圭吾がオフィスに戻ると


「お疲れ様でした。」


と七瀬が出迎える。


「今日の営業会議、うまく行ったようですね。」


「わかるか?」


「はい、副社長のお顔が輝いてらっしゃいますから。」


「そうか。」


七瀬の言葉に笑顔を見せた圭吾だったが


「そう言う七瀬だって、なんか随分嬉しそうじゃないか。」


と問い返す。


「えっ、そうですか?」


「ああ。何かあったのか?」


「実は・・・。」


一瞬言い淀んだ七瀬だったが


「プライベ-トのことなので、就業時間終了後に申し上げようと思ったんですが、大和が意識を取り戻したんです。」


「そうか、それはよかったな。」


圭吾が表情を明るくして言うと


「はい、ありがとうございます。」


七瀬は満面の笑みを浮かべて、頭を下げた。
< 196 / 213 >

この作品をシェア

pagetop