Restart~あなたが好きだから~
その後は、落ち着いて業務をこなした七瀬だったが、終業チャイムが鳴り響くや、副社長執務室に入り
「本日はお先に失礼させていただきます。」
と恭しく頭を下げると、足取りも軽くオフィスを出て行った。その姿を見送りながら
「とうとう、勝てなかったな・・・。」
圭吾はポツリと呟いた。
(あんな眩しい笑顔を、七瀬はとうとう俺に向けてくれることはなかった。七瀬にここまで想われるなんて、愛されるなんて、あんたは幸せな男だな。正直羨ましいよ。亡くなったフィアンセのことを、簡単に振り切れないあんたの気持ちは当然かもしれないが、でも、無事に七瀬の所に戻ってきたんなら、そろそろ彼女の想いに向き合ってやってくれ・・・。)
まだ話をしたこともない大和に、思いを馳せると、圭吾は書類に目を落とした。
一方、すっかり通い慣れた病院への道を急ぐ七瀬は心も身体も弾み切っていた。
(大和、早く会いたい・・・。)
病院に着き、面会手続きを済ませた七瀬は、エレベ-タ-が上るスピ-ドももどかしく、扉が開くや飛び出して、大和の病室に向かった。そして飛び込むように病室に入った。
「大和!」
「七瀬ちゃん・・・。」
明るい声で大和に呼び掛けた七瀬は、複雑そうな表情で自分を見る礼子のことなど、全く意に介すことなく、彼に近付くと
「大和・・・よかった、本当によかった・・・。」
溢れ出す涙をそのままに、大和に思わず抱き付いていた。
(佐倉さん、大和を無事に還してくれて、本当にありがとう・・・。)
大和のぬくもりを確かめながら、昨夜、ここで聞いた弥生の声は、もちろん幻聴なのだろうが、でも本当に天から彼女がくれた言葉だと七瀬は思っていた。
「誰・・・?」
そんな感傷に浸る七瀬の耳に入って来た声。ハッと顔を上げると、そこに見えたのは、戸惑いを露わにしている大和の表情。思わず、彼から離れると
「ごめん。君は誰なのかな・・・?」
追い打ちを掛けるように、問い掛けてくる大和。
「ちょっ、ちょっと、こんな時に冗談止めてよ。」
照れ隠しにこんなこと言ってるのだろうか?それにしても質の悪い冗談だと七瀬が思っていると
「ごめんなさい。本当にわからないんだ、君のことが・・・。」
申し訳なさそうに大和が頭を下げて来る。
「やま、と・・・。」
ここに到って、ようやく異変に気が付いた七瀬が、礼子に視線を向けると、彼女は静かに首を振った。
「本日はお先に失礼させていただきます。」
と恭しく頭を下げると、足取りも軽くオフィスを出て行った。その姿を見送りながら
「とうとう、勝てなかったな・・・。」
圭吾はポツリと呟いた。
(あんな眩しい笑顔を、七瀬はとうとう俺に向けてくれることはなかった。七瀬にここまで想われるなんて、愛されるなんて、あんたは幸せな男だな。正直羨ましいよ。亡くなったフィアンセのことを、簡単に振り切れないあんたの気持ちは当然かもしれないが、でも、無事に七瀬の所に戻ってきたんなら、そろそろ彼女の想いに向き合ってやってくれ・・・。)
まだ話をしたこともない大和に、思いを馳せると、圭吾は書類に目を落とした。
一方、すっかり通い慣れた病院への道を急ぐ七瀬は心も身体も弾み切っていた。
(大和、早く会いたい・・・。)
病院に着き、面会手続きを済ませた七瀬は、エレベ-タ-が上るスピ-ドももどかしく、扉が開くや飛び出して、大和の病室に向かった。そして飛び込むように病室に入った。
「大和!」
「七瀬ちゃん・・・。」
明るい声で大和に呼び掛けた七瀬は、複雑そうな表情で自分を見る礼子のことなど、全く意に介すことなく、彼に近付くと
「大和・・・よかった、本当によかった・・・。」
溢れ出す涙をそのままに、大和に思わず抱き付いていた。
(佐倉さん、大和を無事に還してくれて、本当にありがとう・・・。)
大和のぬくもりを確かめながら、昨夜、ここで聞いた弥生の声は、もちろん幻聴なのだろうが、でも本当に天から彼女がくれた言葉だと七瀬は思っていた。
「誰・・・?」
そんな感傷に浸る七瀬の耳に入って来た声。ハッと顔を上げると、そこに見えたのは、戸惑いを露わにしている大和の表情。思わず、彼から離れると
「ごめん。君は誰なのかな・・・?」
追い打ちを掛けるように、問い掛けてくる大和。
「ちょっ、ちょっと、こんな時に冗談止めてよ。」
照れ隠しにこんなこと言ってるのだろうか?それにしても質の悪い冗談だと七瀬が思っていると
「ごめんなさい。本当にわからないんだ、君のことが・・・。」
申し訳なさそうに大和が頭を下げて来る。
「やま、と・・・。」
ここに到って、ようやく異変に気が付いた七瀬が、礼子に視線を向けると、彼女は静かに首を振った。