Restart~あなたが好きだから~
「佐倉さんと何を話してたの?」


「昨日の夜、弥生の夢を見たんだ。」


その大和の言葉に、七瀬はハッと彼の横顔を見た。


「そして彼女はこう言ったんだ。『早く元気になってね。あなたには幸せにしてあげなきゃいけない、大切な人がいるんだから。』って。」


「えっ・・・?」


「驚いてさ。俺には君以外にそんな人がいるわけないよって言い返したら、彼女は悲しそうな表情を浮かべると、そのまま去って行っちゃったんだ。」


「そうなんだ・・・。」


「それで今日、改めて誰のことなのかって聞いてみたんだけど、答えは返って来なかった・・・。」


そう言って俯いた大和を、少し悲し気な表情で見つめていた七瀬は


「そっか。じゃ、いつかわかるといいね。」


気を取り直すと、そう言って大和に笑顔を向けた。すると、その笑顔を見た大和は、一瞬息を呑んだような表情になった。


「どうしたの?」


それに気付いた七瀬が尋ねると、なぜか大和が改めてまじまじと自分の顔を見つめて来る。


「本当にどうしたの?私の顔に何か付いてる?」


「いや・・・。」


慌てたように首を振った大和は、ハッと七瀬から視線を外した。


「変なの。」


そんな幼なじみの仕種に苦笑いを浮かべた七瀬は、


「それじゃ・・・また来ます。」


そう言って、墓標に頭を下げた。


駐車場に戻る道すがら、じっと何かを考えている様子だった大和が


「なぁ、帰りになんか食べて帰らない?なんか腹減っちゃったよ。」


突然、そんなことを言い出した。


「ダメだよ、外食の許可なんて先生からもらってないでしょ。このまま真っすぐ帰るよ。」


たしなめるように七瀬は言う。


「え~、そんな固いこと言うなよ。ちょっとくらいなら、バレないだろ。」


「ダメって言ったらダメ。さ、帰るよ。」


「わかったよ。」


不服そうな声を出した大和は


「全く相変わらず厳しいな、七瀬は。」


と前を見ながら言った。その言葉を聞いた途端、七瀬は思わず足を止めた。


「大和・・・。」


呟くように自分の名を呼んで、驚いたように固まっている七瀬を振り向いた大和は、


「じゃ、今日は諦める。早く元気になるようにリハビリ頑張るから、そしたらまたバイキング食いに行こう。あれ、美味かったもんなぁ。」


と言って、1つウインクして見せる。


それを見た七瀬の表情から驚きが消えたかと思うと、次の瞬間、その瞳からは涙が零れだして来た。そして


「大和!」


後ろから自分の肩を抱きしめて来た幼なじみの頭を、大和は優しく撫でていた。
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