Restart~あなたが好きだから~
「正確に言えば今は、かな。直接ガミガミ言われてた時は、みんな怖がったり、煙たがったりしてたかもしれないが、離れてみると、その人のよさがわかって来るなんてことはよくある話だ。七瀬がいなくなって、二課の連中は、いかに今まで自分たちが気が付かないところで、七瀬に守られて来たか、七瀬が部下の成長の為に、あえて嫌われ役を買って出てくれていたか、わかったんだよ。」


「圭吾さん、それはいくらなんでも私のことをよく言い過ぎです。私はただ・・・。」


「お前も確かに不必要に肩肘張っていた部分はあった。だが、お前もこの1年で成長した。若林はむくれていたが、しかし奴くらいだよ、いい顔をしなかったのは。課長なんか『右腕が帰って来る』って、もろ手を挙げて、歓迎してたじゃないか。だから、大丈夫、上手くやっていけるさ。二課のことはよろしく頼んだぞ。」


そう言って、暖かい笑みを七瀬に向ける圭吾。


「ありがとうございます。お引き止めいただいた上に、こんなにご配慮をいただいて・・・感謝の言葉もございません。この上は、営業部第二課長代理として、精一杯務めさせていただきます。今日までありがとうございました、そしてこれからもよろしくお願いします。」


そう言って、頭を下げた七瀬に


「とにかく俺は、いや俺たちは、七瀬を共に会社を良くし、大きくしていく仲間として、絶対に手放すつもりはないからな。ずっと一緒にやってもらう。忘れてもらっちゃ困るが、俺はお前を将来の取締役候補だと思ってるんだからな。」


圭吾は真剣な表情で言う。


「まだ、そんなことを・・・。」


七瀬は困ったような表情になるが


「俺はマジだし、この点については、愛奈も同意見だ。だから、覚悟しとけ。」


念を押されてしまう。


「かしこまりました、ご期待に沿えるよう、努力いたします。」


今はそう答えるしかなかった。
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