Restart~あなたが好きだから~
「ところで、彼氏は順調なのか?」


「お陰様で。まだ社会復帰までは少し時間が掛かりそうですが、記憶も戻り、私が退職を思い留まれるくらいには、順調だと思います。ただ・・・残念ながら、大和はまだ彼氏じゃないんで・・・。」


と歯切れの悪いことを言い出す七瀬。


「えっ?まだそんなことを言ってるのか?お前、26歳の花嫁になるんじゃなかったのか?」


揶揄うように圭吾が言うと


「そんな、今更無理に決まってるじゃないですか。私の27歳の誕生日までもう半月もないの知ってるくせに・・・意地悪過ぎます!」


そう言って、膨れる七瀬。


「わかった、わかった。悪かったよ。」


さすがにバツ悪そうに、圭吾が頭を下げる。


「私だって、おふたりを見てれば羨ましいし、大学時代からの親友にラブラブだよ~って惚気られ、理子さんはもうすぐママになるって聞けば、焦りもします。でも、大和はまだ、身体はもちろん、心も一所懸命にリハビリを続けている最中なんです。そんな彼に自分の気持ちを押し付けたくはありません。今の私のやるべきことは、彼に寄り添いながら、見守ってあげること、それだけだと思ってます。だから先を急がず、ゆっくり彼との時間を紡いでいくつもりです。」


そう言った七瀬に


「そうか、七瀬らしいな。」


圭吾は頷いた。


「ありがとうございます。」


七瀬も嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「そろそろ行くか。下で2人がお待ちかねだろう。」


時計を見て、圭吾は言う。今日はこれから愛奈と奈穂を交え、七瀬の送別会が行われることになっていた。


「最後まで、お気遣いいただいてありがとうございます。」


「なに、超過勤務代の先払いだよ。」


「えっ?」


「営業部に行っても、当分は田中からのSOS電話攻勢に、付き合ってもらわなきゃならないだろうからな。」


苦笑気味の圭吾の言葉に


「なるほど。それでは今日は遠慮なく、お腹いっぱい食べて、呑ませていただきたいと思います。」


七瀬がいたずらっぽい笑みを浮かべて答える。


「バイキングにしときゃよかったなぁ・・・。」


「ダメです。それは大和が元気になったら、快気祝いで行く約束してるんで。」


「なるほど・・・。」


そして、顔を見合わせて笑った2人は、肩を並べて、オフィスを後にした。



END
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