Restart~あなたが好きだから~
それは期末試験も終わり、近づく夏休みに心躍らせていた頃。


「藤堂さん、君のことが好きなんです。僕と付き合って下さい!」


誰もいない放課後の教室。1人の男子生徒に呼び出された七瀬は、告白を受けた。呼び出しを受けた時点で、用件を察していた彼女は、あまり驚きもなく、笑顔を浮かべると


「告白してもらったのは、光栄だし、とても嬉しいです。でも、私は誰かとお付き合いするとか、まだちょっと考えられなくて・・・ごめんなさい。」


用意していた返事をして、頭を下げた。彼女の返事に、悲し気に顔を歪めた男子は


「そっか・・・わかった。藤堂さん、時間をとってくれて、どうもありがとう。」


懸命に平静を装いながら、そう告げると、背を向けて足早に教室を出て行った。その後ろ姿に、さすがに申し訳なさを感じて、一瞬顔を伏せた七瀬だったが、気を取り直すと、自らも鞄を手に教室を出た。すると


「大和。」


扉の影に隠れるように大和が立っていた。


「今の見てたの?」


七瀬が尋ねると


「ごめん。帰ろうと思って、七瀬を迎えに来たら、その、お取込み中で・・・。」


バツ悪そうに答える大和。


「別に大和が謝ることじゃないよ。さ、帰ろう。」


七瀬がそう言って歩き出すと、大和も慌てたように後に続いた。


2人にとっては、特に珍しくもない一緒の帰り道。しかし、今はなぜか気まずい空気が流れる。黙々と歩を進めていると、やがて大和が


「あのぅ。」


やや遠慮がちに声を上げた。


「なに?」


横を見た七瀬に


「さっきの告白・・・なんで断ったの?」


思い切ったように尋ねる大和。


「えっ?」


思わぬ問いに、驚く七瀬に


「七瀬はさ、高校に入ってからだけでも、何回も告白されてるよね?」


大和は言う。


「う、うん・・・。」


「なんで?」


「大和・・・。」


「彼氏、欲しくないの?」


その大和の問いに、一瞬絶句した七瀬だったが、気を取り直して


「大和は彼女、欲しいの?」


と、問い返す。すると


「もちろん欲しいよ。」


即答する大和。


「だってさ、彼女といっぱい話したり、いろんな所に一緒に行ったりして・・・そんなのにやっぱり憧れるよ。そんなの、高校生なら当たり前だと思うけどな。」


真顔で自分に語る幼なじみを、七瀬は唖然として見つめるだけだった。
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