Restart~あなたが好きだから~
⑤
週が明けて。何事もなかったかのようにオフィスに出勤して来た七瀬は、相も変わらず有能かつ厳格な主任そのもの。
午前中を先週までの状況把握と課長、係長との打ち合わせに当てると、昼食休憩を挟んで、午後一に行われる部内ミーティングで
「木曜日の商談の提案書、あれじゃ、少しピントがずれてると思います。もう1度、早急に手直しをして下さい。」
「えっ、まだアポが取れてないの?いくらなんでも、動きが緩慢過ぎ。そんなんじゃ、他社に先を越されちゃうじゃない。」
「君はまずは、日本語の勉強から仕直した方がいいよ。こんな間違い、営業能力以前の問題だよ。」
矢継ぎ早に部下たちに指示や指摘を行い、ミーティングを主導していく。司会役の係長など
「他になければ、これで終わりにします。今週もよろしくお願いします。」
そう言ってミ-ティングを締める役割を果たしているに過ぎない。ミーティングが終わり、いったん自席に戻った七瀬はすぐに
「じゃ、田中くん、行くよ。」
と声を掛けると、鞄を手にオフィスを駆け出すように出る。
「は、はい。」
あっという間の七瀬の行動に、面食らったように田中が後を追う。
「相変わらず、お忙しいことだ。」
そんな七瀬を見送りながら、課長が笑っている。
駐車場に降り、社用車に乗りこんだ七瀬は、田中の運転で、営業先に向けて出発する。
「時間は大丈夫だよね?」
「はい、時間に余裕は持ってますから。」
「電車の方が間違いなんだけど、出来ればこの後、もう一社回りたいからね。そっちのアポも取れてるよね?」
「はい、大丈夫です。」
「OK、じゃ急ぐよ。」
このところ、七瀬は田中を事実上自分の専属アシスタントに指名するような形で、連れて歩くようになっていた。あの1件で、田中から疎まれていることは、わかっていたが、それでも
(田中くんは、若林くんの悪い影響ばかり受けてしまっている。もう後輩もいる立場なのに、今のままじゃ彼が可哀想だよ。)
上長として、彼を鍛え直さなくてはならないと痛感したからだ。
(なんとか、食らいついて来てね・・・。)
そんな思いで、七瀬は隣でハンドルを握る部下にそっと視線を送った。
午前中を先週までの状況把握と課長、係長との打ち合わせに当てると、昼食休憩を挟んで、午後一に行われる部内ミーティングで
「木曜日の商談の提案書、あれじゃ、少しピントがずれてると思います。もう1度、早急に手直しをして下さい。」
「えっ、まだアポが取れてないの?いくらなんでも、動きが緩慢過ぎ。そんなんじゃ、他社に先を越されちゃうじゃない。」
「君はまずは、日本語の勉強から仕直した方がいいよ。こんな間違い、営業能力以前の問題だよ。」
矢継ぎ早に部下たちに指示や指摘を行い、ミーティングを主導していく。司会役の係長など
「他になければ、これで終わりにします。今週もよろしくお願いします。」
そう言ってミ-ティングを締める役割を果たしているに過ぎない。ミーティングが終わり、いったん自席に戻った七瀬はすぐに
「じゃ、田中くん、行くよ。」
と声を掛けると、鞄を手にオフィスを駆け出すように出る。
「は、はい。」
あっという間の七瀬の行動に、面食らったように田中が後を追う。
「相変わらず、お忙しいことだ。」
そんな七瀬を見送りながら、課長が笑っている。
駐車場に降り、社用車に乗りこんだ七瀬は、田中の運転で、営業先に向けて出発する。
「時間は大丈夫だよね?」
「はい、時間に余裕は持ってますから。」
「電車の方が間違いなんだけど、出来ればこの後、もう一社回りたいからね。そっちのアポも取れてるよね?」
「はい、大丈夫です。」
「OK、じゃ急ぐよ。」
このところ、七瀬は田中を事実上自分の専属アシスタントに指名するような形で、連れて歩くようになっていた。あの1件で、田中から疎まれていることは、わかっていたが、それでも
(田中くんは、若林くんの悪い影響ばかり受けてしまっている。もう後輩もいる立場なのに、今のままじゃ彼が可哀想だよ。)
上長として、彼を鍛え直さなくてはならないと痛感したからだ。
(なんとか、食らいついて来てね・・・。)
そんな思いで、七瀬は隣でハンドルを握る部下にそっと視線を送った。