Restart~あなたが好きだから~
「沙耶が送ってくれたんだね。迷惑掛けちゃって、ごめんね。」


「ううん、そんなの全然いいんだけど。でも七瀬、初めてのお酒だから、こうなっちゃうのは仕方ないのかもしれないけど、でも警戒感なさ過ぎだよ。七瀬がいくら恋愛に興味がなかったとしても、それが男子が七瀬に興味を持たない理由になんかならないんだからさ。」


「そうだよね。今後は気を付けます、ありがとう。」


七瀬がペコリと頭を下げて、そして言葉が途切れる。なんとも言えない空気が流れるが、それを破るように


「あの七瀬、さっき私に『大和』って呼び掛けたよね?」


沙耶が尋ねる。その言葉に肩をすぼめるような仕種をした七瀬は


「やっぱり聞こえてたよね。ごめん、アイツがいるわけないのに、つい・・・。」


そう言って、1つため息を吐く。


「誰なの?名前からして、男子だよね?」


気負い込むように聞いて来る沙耶に


「幼なじみなんだ。同じ年に生まれたお隣さん同士で、それこそ生まれてから、ずっと一緒にいたんだ。そう、本当にずっと一緒にいたんだよ。それがすごく自然で、当たり前で・・・だからそんな時間がずっと続いて行くって、信じて疑ったこともなかった。だけど、その時間は3年前に突然終わってしまった。私の、せいで・・・。」


俯きながら、答えた七瀬は、その後、なぜ自分が大和と一緒にいられなくなってしまったのか。その経緯を、時に目に涙を浮かべながら沙耶に語った。


「ひょっとして、七瀬がずっと『恋愛に興味がない』って言い続けてるのは、その大和くんが諦めきれないから?」


沙耶の問いに、コクリと頷く七瀬。


「全部自業自得で、もうどうしようもないってわかってるのにさ。現実を認められなくて、バカなことをしたって後悔してることを誰にも知られたくなくて・・・高校の友だちの前では『大和の為に一肌脱いでやった』みたいな顔して。大学では恋愛なんてバカバカしいって、鼻で笑って見せて・・・ホント、バカだよね、私・・・。」


「七瀬・・・。」


ついに明かされた七瀬の本音を聞かされて、一瞬言葉に詰まった沙耶だが、気を取り直すと


「七瀬の辛い気持ちは分かる、でも今のままじゃダメだと思うよ。」


と励ますように言うが


「そんなこと言ったってしょうがないじゃん。大和のことがどうしても諦められない、忘れられないんだよ!」


と叫ぶように答える七瀬に、それ以上のことは言えなくなってしまった。
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