Restart~あなたが好きだから~
(えっ?・・・)


ハッと目を覚ました七瀬の目に見慣れた光景が飛び込んで来る。そして、ここが自分の寝室であることに気付くと、痛む頭を抱えながら、ベッドから身を起こした。


「おはよう、お目覚め?」


声がした方を見ると、そこには柔らかな笑顔を湛えた沙耶が。


「おはよう。ごめん沙耶、私、6年前とおんなじ・・・。」


申し訳なさそうに言う七瀬に


「昨日はだいぶ荒れてたからね、途中から覚悟してた。」


沙耶は笑う。


「ホント、ごめん・・・。」


「だから大丈夫だよ。朝食、出来てるからって、勝手に冷蔵庫の中のもの使っちゃったけど。」


「ううん、本当にありがとう。」


親友にお礼を言うと、七瀬はベッドから降り立った。洗面を済ませ、食卓に向かうと、サラダ、スープにトーストと深酒明けの身体にはいかにも優しいメニュ-が並んでいる。


「いただきます。」


両手を合わせて、そう言った七瀬がフォークを手にしようとすると


「グレ-プフル-ツジュ-ス買って来たから飲んで。すっきりするよ。」


そう言って沙耶がコップを、七瀬の目の前に置く。


「ありがとう。」


そう言って、笑顔を浮かべた七瀬はコップを口に運ぶ。


「おいしい。」


「でしょ?」


そう言って微笑むと、沙耶も七瀬の前の席に着く。


「全部やってもらっちゃって・・・ごめんね。」


改めて謝罪の言葉を口にする七瀬に


「いいから食べて。」


と沙耶。


「うん・・・。」


促されて、七瀬はフォ-クを手に取った。2人はしばらく黙々と食べていたが


「コーヒ-いただいてもいい?」


と沙耶が尋ねて来るから


「うん。」


七瀬は頷く。それを見て、沙耶が立ち上がってコーヒ-メ-カ-を作動させると、すぐにコーヒ-の芳しい香りが漂って来る。すると


「あのさ、七瀬。」


沙耶が七瀬を真っすぐに見て来る。


「うん?」


「昨日はキチンと話せなかったから、改めて言わせてもらうよ。と言っても、正直、私も言い飽きたし、そっちもいい加減聞き飽きたことだと思うけど・・・七瀬はそろそろ前を向かないと。」


「沙耶・・・。」
< 37 / 213 >

この作品をシェア

pagetop