Restart~あなたが好きだから~
それを見て、1つため息をついた沙耶は


「失恋の痛手ってさ、たぶん新たな恋をすることによってしか癒せないんだよ。」


と言い出す。


「えっ?」


その言葉に、ハッと顔を上げて自分を見た七瀬に


「なのに、七瀬がなんで新しい恋にここまで踏み出すことを躊躇うのかが私にはわからないの。どうしても諦められない、忘れられない・・・七瀬が本当にその人のことが好きなのは、私もよくわかってるつもりだよ。でもさ、失恋してから、間もなく10年になろうとしている、それも結婚も決まった相手を思い続けるのはいくらなんでも、もう不毛なことだと思わない?」


諭すように、沙耶は言った。


「そう、だよね・・・。」


それに対して、ようやく微かに頷いた七瀬。そんな彼女を少し眺めていた沙耶は


「七瀬。」


と改めて呼び掛けた。


「こんな時になんだけどさ・・・実はね、私、彼にプロポ-ズされたんだ。」


「えっ?そうなんだ。おめでとう。、昨日教えてもらえれば、祝杯を挙げられたのに、私が酔っぱらっちゃったから・・・ごめんね。」


突然の親友の告白に、笑顔になって祝福の言葉を贈ったあと、申し訳なさそうな表情を浮かべる七瀬。


「それは大丈夫なんだけど・・・でも結婚したら私だって、こうやって七瀬が望むときに、話し相手になってあげられない。お泊りだって、なかなか出来なくなる。こんなこと言って申し訳ないけど、そしたら、七瀬はひとりになっちゃうんじゃない?」


そう言った沙耶の表情には、七瀬を案じる思いが溢れていた。


「ありがとう、そんなに私のこと心配してくれて。私、いい親友を持ったな、幸せだよ。でも大丈夫。私、沙耶が心配するほどは弱くはないつもりだし、恋愛から逃げる為だけに仕事頑張ってるわけじゃないから。大変だけど、やりがいと使命感もちゃんと持ってるから。」


「七瀬・・・。」


「それに・・・沙耶にいろいろ言ってもらって、ようやくもう1回、恋愛に向き合ってみようかなって気になったから。だから・・・安心して、幸せになって下さい。」


そう言って、親友が大好きだと言う笑顔を彼女に向けると


「そっか、それがいいよ七瀬。頑張れ。」


そう言って沙耶も微笑み返す。


「沙耶もいよいよか。で、式はいつ頃の予定なの?」


「本当にこないだプロポ-ズされたばかりだから。でも出来たら26歳のうちに挙げたいかな。」


「そっか、やっぱり26なんだね・・・。」


「えっ、何が?」


「ううん、なんでもない。じゃ、これからコンビニでお酒買って来て、改めて乾杯しようか?」


「えっ?さすがに朝っぱらから乾杯は・・・それは日を改めて、お願いします。」


と言う沙耶に


「かしこまりました。」


七瀬が答えると、顔を見合わせ、2人はまた笑顔になった。
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