Restart~あなたが好きだから~
夜になり、再び弟から連絡が入り、様子がわかって来た。


婚約をし、式に向けて、仲睦まじく着々と準備を進めて来た大和と弥生だったが、ここのところ、弥生の仕事が忙しいということで、連絡が滞り、デートもままならず、式場での打ち合わせも延期が続いていた。


そんな2人が、昨夜久しぶりに会った。大事な話がある、弥生がそう言って、大和を呼び出したのだ。仕事が終わり、待ち合わせのレストランに大和が入ると、弥生が固い表情で待ち受けていた。


「どうした?何かあったの?」


席に着いた大和は尋ねる。いつもなら、自分の顔を見た途端、満面の笑みを向けてくれる弥生が、今は俯いたまま、視線を合わそうともしない。ただ事とは思えなかった。大和の問いに、しばらく沈黙していた弥生だったが、やがて意を決したように顔を上げた。


「ごめんなさい・・・。」


そう言って、大和の顔を見た弥生は、1つ大きく息をすると


「婚約を・・・解消させて下さい。」


吐き出すように告げた。


「え、ええ?」


それは全く予期もしなかった言葉。


「私、やっぱり大和くんと結婚出来ません。」


そう言って、頭を下げる弥生。藪から棒、寝耳の水としか言えない話に茫然と彼女を見つめることしか出来ないでいた大和だったが


「急に何を言い出すんだよ。なんかのドッキリのつもり?だったら、ちょっとたち悪いよ。」


ようやくぎこちない笑いを浮かべて、たしなめるように言った。でも


「こんなこと、冗談なんかで口に出来るはずないでしょ!」


と真剣な表情で返されて、息を呑む。そんな大和に、弥生は言う。


このところ、会えなかったのは、実はあえて会わないようにしていた。それは、このまま大和と結婚することに、疑問を抱いてしまったからで、本当にこのまま流されたままでいいのか、真剣に悩んだのだと言うのだ。


「流される・・・。」


その弥生の言葉が、既に大和にはショックだったが


「大和くんとこのまま一緒にいて、幸せになれる未来が見えなくなっちゃったの。このまま大和くんと一生、一緒にいる自信がなくなっちゃったんだよ!」


という言葉に、ハンマ-で頭を殴られたような衝撃を受けた。
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