Restart~あなたが好きだから~
「今朝の件を気にしてるんだろうが、あれは特におとがめなしと会社も認定したんだから・・・。」
「いえ、おとがめなしではありません。私は人事部長名で注意を受けています。」
「それはそうだが・・・。」
「私は部下のみなさんに厳しく接しているという自覚は持っていましたが、それがパワハラと取られるとまでは、正直考えていませんでした。」
「・・・。」
「注意を受けて、不貞腐れてこんなことを言い出したと受け取られるのは不本意ですが、今回のことは、私が人の上に立つ器ではないことの証明だと思います。主任を外れても、これからも全力で仕事には取り組ませていただきます。どうか、ご配慮をよろしくお願いします。」
あくまで主張を曲げない七瀬に、課長も係長も困惑の表情を浮かべるだけであった。
その後、自宅に戻った七瀬は、このところなかなか顔を合わせられないでいる親友に電話を掛けた。沙耶も既に帰宅していたようで、『どうしたの?』という彼女の声をきいた七瀬は、堰を切ったように、今日の出来事を話した。その言葉を、しばらく黙って聞いていた沙耶は、話が一段落ついたとみると
『またまた随分思い切ったことを言ったね。』
やや呆れた声で言った。
「だって、なんか疲れちゃったんだもん。私は今の仕事は好きだし、やりがいも持ってるけど、でも別に仕事一筋で生きて行きたいわけじゃないし。私が周りに仕事命のバリキャリみたいに見せて来たのは、ひとえにセクハラ親父や恋愛目当てのチャラ男どもを近づけたくなかった、ただそれだけなんだもん。お陰で、会社では恋愛なんかには興味の欠片のない可愛げのない女として完全に認識されるようになったし、だとしたら、もうそんな虚勢張ってる必要もない。沙耶に壊れちゃうって心配掛けることもなくなるし。」
そう答えて、七瀬は笑う。
『それはどうかな?』
「えっ?」
『自分から主任降りたら、少なくともバリキャリじゃないことはバレちゃうでしょ?』
「でも仕事第一の姿勢は変えるつもりないし。」
『それもどうかな?だって、これからプライベ-トも忙しくなるんでしょ?』
「沙耶・・・。」
『人の不幸を喜ぶのは良くないことだけど、でも幼なじみくんが失恋どころか、婚約解消なんて大ダメ-ジ負って、気持ちが弱ってる。こんな大チャンスを逃す手はないよね?』
「まだ婚約解消って完全に決まったわけじゃ・・・。」
勢い込んで言って来る沙耶の言葉は、確かに間違ってるとは思わなかったが、でも七瀬は素直に頷くことは出来なかった。
「いえ、おとがめなしではありません。私は人事部長名で注意を受けています。」
「それはそうだが・・・。」
「私は部下のみなさんに厳しく接しているという自覚は持っていましたが、それがパワハラと取られるとまでは、正直考えていませんでした。」
「・・・。」
「注意を受けて、不貞腐れてこんなことを言い出したと受け取られるのは不本意ですが、今回のことは、私が人の上に立つ器ではないことの証明だと思います。主任を外れても、これからも全力で仕事には取り組ませていただきます。どうか、ご配慮をよろしくお願いします。」
あくまで主張を曲げない七瀬に、課長も係長も困惑の表情を浮かべるだけであった。
その後、自宅に戻った七瀬は、このところなかなか顔を合わせられないでいる親友に電話を掛けた。沙耶も既に帰宅していたようで、『どうしたの?』という彼女の声をきいた七瀬は、堰を切ったように、今日の出来事を話した。その言葉を、しばらく黙って聞いていた沙耶は、話が一段落ついたとみると
『またまた随分思い切ったことを言ったね。』
やや呆れた声で言った。
「だって、なんか疲れちゃったんだもん。私は今の仕事は好きだし、やりがいも持ってるけど、でも別に仕事一筋で生きて行きたいわけじゃないし。私が周りに仕事命のバリキャリみたいに見せて来たのは、ひとえにセクハラ親父や恋愛目当てのチャラ男どもを近づけたくなかった、ただそれだけなんだもん。お陰で、会社では恋愛なんかには興味の欠片のない可愛げのない女として完全に認識されるようになったし、だとしたら、もうそんな虚勢張ってる必要もない。沙耶に壊れちゃうって心配掛けることもなくなるし。」
そう答えて、七瀬は笑う。
『それはどうかな?』
「えっ?」
『自分から主任降りたら、少なくともバリキャリじゃないことはバレちゃうでしょ?』
「でも仕事第一の姿勢は変えるつもりないし。」
『それもどうかな?だって、これからプライベ-トも忙しくなるんでしょ?』
「沙耶・・・。」
『人の不幸を喜ぶのは良くないことだけど、でも幼なじみくんが失恋どころか、婚約解消なんて大ダメ-ジ負って、気持ちが弱ってる。こんな大チャンスを逃す手はないよね?』
「まだ婚約解消って完全に決まったわけじゃ・・・。」
勢い込んで言って来る沙耶の言葉は、確かに間違ってるとは思わなかったが、でも七瀬は素直に頷くことは出来なかった。