Restart~あなたが好きだから~
それからも、七瀬はいつものように、勤務を続けてはいたが、周囲に厳しい言葉をぶつけることは、明らかに減って行った。
「やっぱり、人事部に叱られたのが堪えたのかな?」
周囲はひそひそと言っていたが、七瀬としては、まだ誰にも言えないが、役職を降りると決めた以上、余計なことはもうしないと決めただけであり、営業部長から呼び出されて、翻意を促されても
「部長からこんな言葉をいただけるなんて、光栄ですが、どうか我が儘をお許し下さい。」
と動じる様子を見せなかった。こうして1週間ほど時が過ぎた頃、動きが起こった。七瀬と若林が課長に呼ばれたのだ。面談室に入るなり
「辞令の内示だ。」
厳しい表情で告げた課長に
「辞令?」
全く予期していなかった若林が、緊張を隠せない表情で尋ねる。
「藤堂くんが営業部を外れることになった。後任は若林、君だ。」
「えっ?」
「ほ、本当ですか?」
よもやの言葉に、パッと表情を明るくする若林に対して、主任を降りるだけのつもりだったのに、営業部からも外れる事態になって、戸惑う七瀬は
「で、私はどこへ異動なのでしょうか?」
「専務秘書だ。」
「ええ!」
これには七瀬本人だけでなく、若林までが驚きの声を上げる。
「専務秘書、ですか・・・?」
信じられないというように問い返す七瀬に
「そうだ。この度、現職の秘書の方が退職されることになって、是非後任に藤堂くんをと、専務直々のご指名と聞いている。」
という課長の答えに、思わず若林が吹き出した。
「なにがおかしい?」
「すみません。」
課長に睨まれて、首をすくめる若林。
「正式発令は1週間後、それまでは他言無用だ。もしその前に漏れたら、この人事はなかったことになる。いいな、若林。」
「な、なんで俺だけに釘を刺すように・・・。」
「お前なら浮かれて、四方八方に吹聴しかねないからな。」
ぴしゃりと言われて、むくれながら黙る若林に対して
「あの・・・本当に専務が私を指名されたんですか?」
七瀬もまだ、釈然としないという表情で尋ねる。
「私はそう聞いている。」
「でも私は、専務とは今まで、ほとんど接触が・・・。」
「そこらへんのことは私にはわからない。ただ知っての通り専務は、社長のご子息であり、後継者であるから、その秘書になる以上、君の担う責務は、単なる役員秘書とは比べ物にならないくらいに重い。それは肝に銘じるように。」
重々しく告げる課長の言葉に、七瀬の表情は固くなる一方だった。
「やっぱり、人事部に叱られたのが堪えたのかな?」
周囲はひそひそと言っていたが、七瀬としては、まだ誰にも言えないが、役職を降りると決めた以上、余計なことはもうしないと決めただけであり、営業部長から呼び出されて、翻意を促されても
「部長からこんな言葉をいただけるなんて、光栄ですが、どうか我が儘をお許し下さい。」
と動じる様子を見せなかった。こうして1週間ほど時が過ぎた頃、動きが起こった。七瀬と若林が課長に呼ばれたのだ。面談室に入るなり
「辞令の内示だ。」
厳しい表情で告げた課長に
「辞令?」
全く予期していなかった若林が、緊張を隠せない表情で尋ねる。
「藤堂くんが営業部を外れることになった。後任は若林、君だ。」
「えっ?」
「ほ、本当ですか?」
よもやの言葉に、パッと表情を明るくする若林に対して、主任を降りるだけのつもりだったのに、営業部からも外れる事態になって、戸惑う七瀬は
「で、私はどこへ異動なのでしょうか?」
「専務秘書だ。」
「ええ!」
これには七瀬本人だけでなく、若林までが驚きの声を上げる。
「専務秘書、ですか・・・?」
信じられないというように問い返す七瀬に
「そうだ。この度、現職の秘書の方が退職されることになって、是非後任に藤堂くんをと、専務直々のご指名と聞いている。」
という課長の答えに、思わず若林が吹き出した。
「なにがおかしい?」
「すみません。」
課長に睨まれて、首をすくめる若林。
「正式発令は1週間後、それまでは他言無用だ。もしその前に漏れたら、この人事はなかったことになる。いいな、若林。」
「な、なんで俺だけに釘を刺すように・・・。」
「お前なら浮かれて、四方八方に吹聴しかねないからな。」
ぴしゃりと言われて、むくれながら黙る若林に対して
「あの・・・本当に専務が私を指名されたんですか?」
七瀬もまだ、釈然としないという表情で尋ねる。
「私はそう聞いている。」
「でも私は、専務とは今まで、ほとんど接触が・・・。」
「そこらへんのことは私にはわからない。ただ知っての通り専務は、社長のご子息であり、後継者であるから、その秘書になる以上、君の担う責務は、単なる役員秘書とは比べ物にならないくらいに重い。それは肝に銘じるように。」
重々しく告げる課長の言葉に、七瀬の表情は固くなる一方だった。